第12話 Summer of Love

音が…合う!音を止め、俺はマイクを掴み、叫んだ。

「こんばんは、エイプリル・ガールフレンドです!一曲目、 Summer of love!!」

1、2、3、4、鹿嶋のジャズマスターから曲は始まる。

そしてエイトビートが炸裂し、ビートにテレキャスとベースが乗っかり、

リフをハイテンポで打ち鳴らす。全部出すと決めている。俺は歌う。

「夏‼」

っとシャウトする。

‘‘夏 終わり 暗がり 人混み 俺は四月の亡者 揺れるガールフレンド

堂々と仁王立ち 走り出す列車 海風は舞っているか?

Summer of love 全部救出する 成功か?

鑑みた境界線 揺らせ鉄線 暴走トランスフォーメーション

しゃくりあげた剝離 人格は乖離 嗚呼

夏 終わる 愛 終わる あいうえお 右往左往 遺詠 ‘‘

一曲目が終わる。歓声が鳴り響く。

二曲目。

「コールド・ソング。」

俺のギターと、鹿嶋のギターの掛け合いの曲だ。雷鳴、幻影。

‘‘ディレイがかった街で 雨に濡れ 泣いている俺

全編凍らす 全編凍らす

自ら命 絶った彼女の部屋に廻る空気の揺れ

Air エアー

全部凍らす 千年コーラス

自ら気持ち 絶った彼女の夢に舞う空気の揺らぎ‘‘

…次が最後の曲だ。ドラムとベースのインプロビゼーションから始まる、最後の曲。

「Fender Telecaster。」

聴く者すべてを切り裂くような、テレキャスの音を鳴り響かせる。

バキバキと。ジャキジャキと。

────曲の途中。声が枯れ、弦は切れ、さらに、テレキャスから音が出なくなりかけていた。

やばい…どうしよう…!焦燥する。頭が真っ白になりかけていた。その時。

「やれるさ、お前なら。」

おじさんに、背中を叩かれた気がした。そうだ、できるよな…

頭には、今までのバンドの記憶、そしておじさんとの思い出が走馬灯のようによみがえっていた。

────。最後、怒涛の展開の後。余韻。会場は静寂に包まれた。俺は言った。

「このライブをもって、エイプリル・ガールフレンドは解散します。」

「…」

ざわ…とする客席。

「今日までありがとうございました。」

俺たちは、撤収作業を済ませ、舞台袖にはけていく。

最後のゲストの演者含め、スタッフも、みなポカンとしていた。会場を出る。

百鬼さんと古島さんが裏手に車を回してくれていた。全員で乗り込む。

「いいライブだったじゃねぇか。」

「また店に来なよ。テレキャスター、修理してあげるからさ。」

二人は言った。その後、静かな打ち上げを行い、俺たちは解散した。

「死ぬ前にロックができて、よかったです。」

俺。

「お前らと出会えて楽しかったよ、ありがとう。」

律ちゃん。

「思いっきりギターが弾けたよ。サンキュー。」

鹿嶋。

「ライブ、すごい楽しかったです。」

琵琶くん。そして…

────エイプリル・ガールフレンドは、夏の終わりと共に去っていった。────

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