第11話 崩壊アンプリファー

やがて、合宿も終わりの日になった。合宿前と後では、確実に力をつけただろう。

最後の日、出発前。俺たちは、部屋に集まって会話をしていた。

「じゃあ…そうしよう。」

ちょっと、他には聞かせられない話だ。とにもかくにも、俺たちはひとつの答えに達した。

宿の玄関に行く。俺は一人、小唄をアコギで歌った。

すぐに、三人が降りてきた。女将さんが出てくる。

「本当にありがとうございました。お世話になりました。」

「いえいえ、とんでもない。なんか知らんけど、本番、頑張ってね。」

「ええ。やってきます。」

と、玄関の外に、車が来た。

「迎えに来たぜ。」

「あれ?古島さんじゃないですか!」

「久しぶりだな。串田くん。いい顔になったじゃないか。」

「いえいえ…」

「じゃあ、行こうか。」

俺たちは、ワゴン車に乗り込む。いよいよ、三日後、ライブだ。

車は、夏の終わりの風を切って、俺たちを運んでいった。

8月31日。ライブ当日。真昼間から、「エイプリル・ガールフレンド」は、

文化会館に乗り込んだ。入口から入ると、

他の出演者からなんともいえん、特異なものを見る目で見られる。

早速、会場に行き、運営の人たちから段取りを教え込まれる。

その後、リハ。本番のリハーサルを行った。

色々な準備を終え、いよいよ、本番直前になった。楽屋で、出番を待つ。

「お客さんの入りは、かなりいいらしいよ。」

「ひょっとして、マジで、俺たち目当て?」

「うん。」

「やべぇ。マジで緊張する。」

「リラックスリラックス。」

モニターを見る。ブザーが鳴る。開演。いよいよ、本番が始まった。

出囃子と共に、一組目のバンドが登場する。湧き上がる、お客さんの拍手。

二組目のバンドの出番が終わる。、三組目のアーティストが出る。場が温まっていく。四組目、五組目、六組目…

────やがて。俺たちの番が回ってきた。

「エイプリルさん、そろそろ準備お願いします。」

「は、はい!」

全員で立つ。楽屋の扉を開けて、道を進む。舞台袖に辿り着く。

俺たちは、全員で輪になって肩を組んだ。律ちゃんが、声を出す。

「これまでの全てを。特訓の成果を見せてやろうぜ。」

「OK。」

鹿嶋。

「出し尽くします。」

琵琶くん。

「よっしゃ。」

俺。

「これが‘‘最初で最後‘‘だ。楽しんでいこうぜ。よっし行くぞ。GO‼」

一斉に声を出す。出囃子が鳴っている。ステージに飛び出す。

照明が眩しい。途端、割れんばかりの拍手と歓声。リハで見たとはいえ、実際の座席に人・人・人だ。

…やってやるよ。俺は、三人とアイコンタクトを取る。

右手を振りかぶる。瞬間、どでけぇ会場に、雷鳴が轟いた。

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