第7話 百鬼夜行

それからは、四人で定期的にスタジオに集まって、セッションしたり、

オリジナルをやろう、という意見から、俺のデモを元に曲を作ったりした。

「この四人なら無敵だ。」そんな気持ちに俺はなっていた。

6月。練習の後。帰宅の道につく中の、会話。

「ライブ、やりたいね。」

鹿嶋さんが言った。

「ですね。僕もやりたいです!」

「ライブか。どこでやるつもりだ?」

「やっぱ、最初は地元のライブハウスで。」

「FOOLISHとか?」

「うん。」

「串田、お前もライブやりたい?」

「やりたいけど…出たことないからなぁ。出方もわからないし。」

「じゃあ、明日、予定合う?…FOOLISH行くか。」

「ええ~?」

「デモ持ち込みに行くぞ。」

「う、うん。」

その後、路地で別れて、自宅に帰る。

なんか、トントン拍子に事が進んで、びっくりするな。

このギター、やっぱすごいのかも。

翌日。四人は、ライブハウス、「FOOLISH」に集まっていた。

松下さんが事前にハコに連絡してくれていて、話は通っていた。

ライブハウスの店長、「百鬼」さんに、バンドのデモテープを聴いてもらった。

「…ふん、悪くねぇ」

「ホントですか!」

「で、ライブ、出たいのか。」

「はい。ぜひ、イベントに出演させていただければ、と思っています。」

「ふっ、いいねぇ。じゃ、演奏、見せてもらおうか。」

「はい。」

なにやら、FOOLISHは、事前に演奏を直接見てもらって、そこで出演を審査されるそうだ。

初めて、俺は人前で演奏する。しかもギターボーカルだ。緊張する、なんてもんじゃあない。ステージ裏で。

「よし、ライブ、勝ち取るぞ。けど、肩の力、抜いていこう。」

「おう。」

「うん。」

「はい。」

ステージに立つ。ギターを持つ。本番があるなら、ここにお客が…

いや、集中、集中。ステージに照明が当たる。

「エイプリル・ガールフレンドです。よろしくお願いします。

聴いてください、‘‘四月の死‘‘。」

「1、2、3、4」

ドラムカウント。演奏開始。

────途中、何回かミスった。けど、みんなの力を借りて、なんとかやり切った。

俺は、滝のように汗をかいている。呼吸も荒い。百鬼さんの方を見る。

パチパチパチパチ。…小さな拍手。

「ボーカル。お前は特にかなーり粗削りだが…。」

ゴクリ。

「ま、連絡を待て。」

ガクリ。

「はい。ありがとうございました。」

俺たちは撤収作業をして、はけていく。ライブハウスから出る。

「はぁ~、疲れたぁ~、ってか緊張した~ッ。」

「はは、よくやったわ。」

松下さんが、両手で俺の肩をほぐす。

「よし、帰りに、ラーメン食ってこうぜ。」

「賛成。」

俺たちは帰路についた。

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