第4話 Studio 6
数日後。俺は、家で寝っ転がっていた。
その後は何もなく。まぁ、連絡なんて来る訳ないよな…
と。突然、携帯が鳴った。
「誰だ?」
俺にメールとは。身内からか。…?知らないメアドだ。開いてみる。
『こんにちは。こないだライブでお会いした者です。
デモ、お聴きしました。とてもよかったです。
一度、スタジオで音を合わせませんか? 鹿嶋(かしま) えい子』
「ん?ん?ん⁇」
あ⁉れ、連絡が、来たッ。噓だろ?マジか。
テンパる俺。即座に返信する。
『返信ありがとうございます。俺も是非、合わせたいです。
使っているスタジオなど、ご希望はありますでしょうか。』
すぐに返信。
『私が練習でよく使わせてもらっている、街の楽器屋さんに小さなスタジオがあるので、
そこでいかがでしょうか?
「East of Timeline」というお店です。』
あ、俺ん家から割と近い。
『場所、家から近いのでわかります。日時はいつがよろしいでしょうか?』
『では、金曜日の午後三時でいかがでしょう。
ご都合、合いますか?』
『はい。問題ないです。では、その日時に。ありがとうございます。』
『それでは。』
…なんだ、このトントン拍子な事の進みようは。
俺は、密かにガッツポーズした。このギターの出番だ。
でも俺、リハスタなんて行ったことないぞ。どうしよう。
今日は火曜日。猶予は二日、か。俺は、情報を集めようと街に出た。
行きつけの書店で、「バンド入門」の本を探すが、意外とない。
仕方ない。また漫画買うか。漫画コーナーに行く。
最近見つけた漫画の1巻を買い、レジへ。あ、またこの若い男の店員さんだ。
「ありがとうございましたー。」
会計を済ませ、外へ。そうだ、楽器屋の下見でもしておくか。
しばし街を歩くと、目当ての楽器屋はあった。
「…」
こ、こええ。え、これ店やってんの?照明ついてないけど。
中に入るのに少し躊躇してしまう。
結果、俺は店のショーケースのギターやアンプを見て、帰った。
とにかく、練習。練習。あと二日しかない。
────金曜日はすぐにやって来た。午後二時過ぎ。俺はギターケース片手に、家を出る。
遅れてはいけない。急ぎ足で街を行く。
さて、例の楽器屋に辿り着くと、店の前に彼女、鹿嶋さんは立っていた。俺は声を掛ける。
「あ、どうも。こんにちは。」
「こんにちは。この間のライブ以来ですね。」
「そうですね。曲に興味いただいて嬉しいです。」
「あの、しゅうた、さん?お名前は?あの時ちゃんと伺っていなかったので。」
「串田です。串田秀太。」
「串田さん。メールでも言いましたけど、私は、鹿嶋えい子です。」
「じゃ、鹿嶋さんと呼ばせていただきますね。」
「あ、敬語いいですよ。気軽に鹿嶋で。」
「あ、はい。」
「それじゃ、中入りましょうか。」
「了解。」
楽器屋の中に入る。店内は、木目調のデザインであった。
壁には、商品のギターやベースが掛けられていた。値段たっか。
カウンターでは、店主とみられる40代くらいの男性が、ギターをいじっていた。修理かな。
「いらっしゃいませー。あ、えい子ちゃん。」
「こんにちはー。古島(ふるしま)さん。」
「今日も練習?今日は二人?」
あ、俺か。
「こんにちは。この店には初めて来ました。串田です。よろしくお願いします。」
「よろしく。僕、店主の古島。早速、スタジオ使う?」
「お願いしまーす。」
店主と鹿嶋さんに連れられて、店の奥に進む。古島さんが暗がりの電気をつけると、
そこには、おしゃれというか、アングラな感じの簡易スタジオが。
「じゃ、いつものように二時間ね。」
俺、そっと挙手。
「実は俺、スタジオ来るの初めてなんですけど…」
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