第20話 無表情の男は国を変えていく

第20話


この世界における中央大陸。


帝国。


闘争を司りし神を信仰し力を選ぶ大国。

故に戦えないもの達は下層とよばれるスラムへとおくられる。


あらゆる国を侵略し世界の脅威になるべき国。

だがこの国は滅ぶことになる。


ある男によって。



「な、なんだ、お前は」


目の前の赤の軍服を着た男達が言う。


「おかしいな、国は民を護るものではないのか?」


黒いコートに無表情の男は、無表情に目の前の軍人達に問いかける。


「人は生きるために生活するものだ、けして滅びるために生きるものではない」


彼の持つ大鎌に命は刈り取られる。



1週間前


スラム地区


無表情に料理をする男、そこに連なる少年少女たち。

鍋に雑多に入れられた、野菜と肉



「グラ兄~腹減った」


「すこし待て」


少しだけ優しい笑みを浮かべて子供達に声をかける。


「しかし、ここに来て1ヶ月、ずいぶん馴染んだなあ」


リアスはタバコを吸いながらため息をつく。


神父服をたたきながら、スラム街をみる。

あらゆる瓦礫がなくなり、コンクリートで造られた頑丈な白い家。


全てグラトニーが廃墟である場所を更地にして、土を耕し整地した。


グラトニー自身の固有能力だろうか?種を植えすぐさま実り、スラム街の者たちの腹を満たしている。


見返りもせず、ただ神の御業とも思わしき奇跡を行う。



「…使徒か」


神の使命を帯びて時に現れる奇跡の人間。


昔の聖書には度々存在は確認されてはいたが、今の現代において存在は認められてなかった。


だがグラトニーの存在はその使徒の存在として認知できるものであった。


だが神性でありながら魔性の力も見え隠れしていて、どういうものかまだ把握しきれていない。


だが彼が来ることにより救いは生まれた。


「だが帝国はグラトニーの存在を許すのか」


リアスはしっかりと煙草にまた火をつける。



とある夜


赤い軍服の男は語る。


「低俗な下層市民のスラム街で奇跡がおきた」


連なる軍服の男たちは語る。


「奇跡は皇帝にしか与えられねばならない」


男たちの狂気の目はスラム街にむく


「連行せよ!黒いコートの男を!」



叫びと共に彼らの行進がはじまる。



















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