第19話 紅たる絶対者

第19話


紅という赤き力はあらゆる物に活力をもたらし、全てを灰にする。


灰塵の紅、かつての世界をゆるがす神魔大戦で、もっとも多く魔を屠りし剣帝。



今は探偵業をしながらとある都市に身を寄せているが、未だその性根は変わらず。


「教会は噂を聞くほどではないな」



マードックは欠伸をする。


「こりゃ近所の奴ら呼ぶまでもなかったかなあ」


「おいおい、そりゃないよ、マードック」


青いツナギを着た隻眼の青い髪色のポニーテールの美女が現れた。粗雑な雰囲気にどこか高貴な雰囲気をもつそんな長身の美女は肩をすくめる。


「ステラ」


「そうじゃのう、最近はわしらのシマでも色々しとるからのう」


黒い和服を着た黒いサングラスのスキンヘッドの柔らかい笑みの老人が笑う。


「黒老師」


老人はかかっと笑う。


「しかし、偽神と知らず、それを主神と信仰するもの達の愚かさよ、なあマードック」


「いってやるなよ、信仰にしか希望をみない奴もいるんだ」


マードックは煙草に火をつける。


「だが、信仰があるからとて他者を滅ぼす免罪符にはなるまい」


黒老師と呼ばれた老人はくかかっと笑う。


「おいおい、[呪い]を発動するなら、影響ないようにしてくれよ?」


「なあに、この場所を隔離するだけだ、真実を与える呪を出すだけよ」


黒老師と呼ばれた老人は指を鳴らす


「呪真天神領域」



そう呟くと同時に黒い世界が広がる。


教会の生き残るもの達に映されるのは。


教会の隠された真実をしる。


神の名の元に財産を奪い、男達は殺され女子供は慰みに使われる。


世界は黒く染まり宗主は偽りの神を偽証する。


偽りはやがて力を持ち安寧を奪われる。


真実を聞いた時教団たる者たちの慟哭が響く。


「真実しれば偽神は滅ぶ」



黒老師は笑うと同時に黒い空間を閉じる。



3時間後


教団と呼ばれる集団はこの世界から消えた。




とあるスラム街。



「…腹減ってるか?」



黒いコートを纏い。黒髪の短髪に左耳に銀色のピアスをつけた、白い肌の整った東洋人のような美麗な男。細身であり無表情になりながらもどこか優しげな雰囲気の男



目の前に倒れている包帯まみれの少女をみると抱えあげ、まわりを見る。


「この国は空腹か」


「兄ちゃんどこからきた」


金髪に粗雑に伸ばしたタバコを吸った神父服の男がふらりと話しかける。


「…遥か空から、父に使命を言われ人を知りにきた」


「…神聖存在?にしちゃすこし禍々しいな」


神父服の男は携帯灰皿をとりだすと


「…お前名前は?」


「グラトニー」


「ようこそ、帝国へこちらは下層エリア、地獄の入口さ」


神父服の男はニヤリと笑う


「俺の名はリアス=アクタビ、まあここらで医者の真似事してる生臭坊主だ」


「…俺は造られた人…」


「…ホムンクルスか、そこまで高度な奴は初めてだな」



「まあ、父は特別だ」



無表情に語るグラトニーと名乗った男はそういうと、問いかける。


「厨房はあるか?」


リアスは煙を吐くと頷きかえした。



グラトニー、創造神より暴食の力を与えられた使徒のひとり、彼の使命は人を知り、人を救うということ。


そのなかで人を見出すことを見出された。故に



「…食料はもっている」


案内された調理場であらゆる魔物の肉を取り出し調理をはじめている。彼のスキルには料理特化のものもあり、命を育み回復するものもある。


「…ワイバーンの肉とかやべえな、鑑定スキルのレベルがガンガンあがる」


「辿りつくまえに狩った」


手際良く鍋に野菜をぶちこみ出汁で整えてく、簡単な肉鍋ではあるが高レベルの肉はかなりの美味であるから問題はない。


「リセスさん、スラムのひとをよんでくれ、食べよう」


「…とんでもない善人だな」


「腹が減るのはよくない」



グラトニーは無表情にいいかえすと、リセスは肩を竦めた








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