第17話 先生は煙草を吸う



結果的にブルーガーデンの村の呪いは解かれ、クインシーと想い人は無事新たに結ばれ、村人達もまた元通りに戻った。ギルティもせっかく来たのだから少しの間、滞在しようと村の外れのログハウスを借りて青薔薇の成分や薬効的な効果を調べることにした。



「なあなあ、先生はなんで煙草吸うんだ?まじいのに」


村の少年、青髪に黄色い瞳の猫のような表情のロクサが問いかける。


「うーん、まあこの苦味がいいからなあ、身体にはわるいし。肺も黒くなるがなかなか嗜好品はやめられんからなあ」


研究道具を広げながら煙草を携帯灰皿に押しつける。


「まあ、ロクサくんが来たから吸うのやめるけどな」


「えー!煙草の匂い好きなのに!」


「成長期の君には些か毒だからねえ」


ギルティは肩を竦め、ロクサに笑みを向ける。


「先生はこの大陸から大分離れた所から来たんだよなあ」


「そうだねえ、しかし何で先生なんだい?」


青薔薇を液状にしながら成分を器具で抽出しながら問いかける。


「え?だって先生、じっちゃん達の診察もしてたじゃん」


「あー、御老人達か、体調悪そうだったからね、医者の真似事だ、大した事はしてないさ」



「でもさ、一杯勉強したんだろ?」


「まあ、そうだねえ、だがロクサくん、私みたいなのは変人のようなものだよ、真に褒められるべきはこの変人に教えを受けようとする君みたいな少年だよ、ロクサくん、今日は何が知りたいのかな?」


ロクサはにっこり笑うと古ぼけた本を見せた。


「はじまりの勇者の手記!多分古代神聖語だとおもうから解読したいんだ!」


「8歳で大分コアな物に興味を持つね、そうだね、こなの世界が始まったとされる時代の文字だ、解読してみるかい?」


「うん!」


ロクサの笑顔を見てギルティは微笑む。




「初雪ちゃーん、珈琲」


「はいはい、探偵さんなのに今日もお客さん来ないわね」


「探偵なんてのは他人の粗探しだからねえ、無い方がいいのよ」


何故かマードックの助手になることになった初雪は肩をすくめる。


「じゃあ趣味なの?お仕事はおカネ貰わないと成り立たないわよ?」


「ああ、不労所得もらってるから大丈夫だよ、ここらへんのアパート、大体所有者俺だから」


マードックは煙草に火をつける。


「ぼかぁね、多分色々頑張ったわけよ、色々魔王とか邪神とか倒したりね、創造神、キミの父上にも休息を頂いてるのよ、ならば好きなことするよねー」


「探偵がしたいこと?」


「探偵ってハードボイルドじゃないか」


「まあ渋いわね」


「だろ?」


「だったらムチムチのお色気美女とかがいいんじゃないの?」


「おいおい、ミステリアスな美少女ってのもレアだぜ、いずれそのミステリアスな魅力に惹かれて事件が来るのさ」


「そんな…血の匂い?」


初雪の言葉と共に部屋に血まみれの筋肉質な男、ドワーフがなだれこんでくる!



「おいおい!ガンダルフ!死ぬには良い日だ、なんて言うんじゃねえだろうな!」


「うるせえよ!俺がそんな意味ねえ話をするか!とりあえず依頼だ!依頼だよ!探偵!」


「厄ネタか、その坊主」


「厄ネタだが死なれたら寝覚めがわりいからよ」


ガンダルフと呼ばれた男の懐には3つくらいの2つ角の黒髪の子供が寝ていた。


「…2つ角に黒髪、魔王種か」


「ああ、魔素生まれの親無しだ」


「となると相手は教会か」


「だが生まれたばかりのガキに罪はねえ、生まれたのが俺の工房に溜まった魔素生まれだ」


「せがれか」


「せがれだ」


ガンダルフはマードックに目を向ける


「よーし!ガンダルフ!引き受けるぜ、だが依頼金は指定する!」


マードックはにやりと笑う。


「ひとつ!その子の名前は?」


「コクテツだ」


「いーい名前だあ!そいつはお前の息子だな!」


「ああ、嫁はいねえが立派な息子だ」


「OKだ!じゃあ決まりだな!」


マードックはまたにやりと笑う


「教会の奴らぶちのめして寄付金受け取り最高のパーティだ!ガンダルフ身体速攻治すぞ!他の奴らも連れてこい!教会様がなんぼのもんだ!」


「…勇者様がすごいこと言うのね、まあ教会なんて神の名前を騙るだけ騙って権力を手に入れた団体だし、まあこの機会に倒されるのもありね」


初雪はふうとため息をつくとガンダルフに手を翳し治療する


「傷があっという間に…嬢ちゃん、あんたは?」


「…マードックさんの知り合いの娘よ、助手になったみたいね、初雪よ、よろしく」


「…とんだ美少女の助手見つけたもんだなあ、儂は改めてガンダルフだ、この街オクターブの鍛冶屋だ、こいつは息子のコクテツ、うちの工房の魔素だまりから産まれた息子だ」


「鍛冶屋の魔素だまりで生まれたなんて鍛冶師にとっては福音のような子ね」


「儂もそう思うよ」


ガンダルフはにこやかに笑う。


「さてと、いくかね、教会とやらに」


マードックは立ち上がると


「その坊主はちょっと預けとくか、ニャルラトホテプ」


「呼んだかい?」



突然現れた黒い無地のスーツに無地の黒の仮面を被った男が穏やかに声を発した。


「驚いた、上位存在、這い寄る混沌を召喚するなんて」


「君の存在はこの世界においては俺よりも上だよ、貌においてはこの世界では1面しか出してないからね、この世界では制約があるからね、まあそれでもそれなりの力はあるけど」


ニャルラトホテプは楽しそうに笑う。


「まあ、気まぐれにこの世界で出会ったマードック君と友達になってね、召喚契約をしたわけさ」


「…普通なら発狂しそうだけど」


初雪は肩を竦める


「まあ適正があったんだろうね、まあ安心してよ、発狂しないように力は抑えてるし、俺は子供は可愛いと思う質なんだ」


「マードックが友と呼ぶなら大丈夫だ、頼むぜ、俺の息子を」


「任されたよ、あーでも僕の身体に入ればこの子、絶対安全だから俺も参戦していい?」


「あー、そういや一応お前も神カテゴリーだもんな」


「神というよりこちらの世界では概念かもしれないね」


ニャルラトホテプと呼ばれた男はコクテツを受け取ると胸元にくっつけて体内にいれてしまった。


「一応、空気ちゃんとあるしこの子には何の問題もないからね」


「…マードックの友達は不思議な奴ばかりじゃの」


「あんま会わせたことないが?」


「3人も会えば十分じゃ!」


「あら、他にもいるんだ」


「心外だなあ、この世界じゃ変なことしてないよ?」


「別の世界じゃしてたの?」


「そりゃ這い寄る混沌ですから!あ、でも子供や女の子の前ではなんもしてないよ?」


「不安なこというね」


初雪とガンダルフが呆れると同時に


「…あー行く前に出迎えがきたか」


マードックはにやりと笑うと同時に黒いメタリックカラーの拳銃を抜きはなつ!












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