第13話 悪友達は語らう


「なかなかよい店だね」


セバスはふむと落ち着いた雰囲気のBARに入ると頷きカウンターに座る。カウンターが10席ほどで、穏やかな薄いオレンジの灯り、黒い内装の店内、酒瓶が綺麗に棚に置かれ、見た目麗しい女性のエルフが男装の服をきてにこやかに迎えてくれる。


「ああ、ちょうど店が空いてたんでな、俺が出資して店にしたんだ」


「ジョナサン、今君なにしてるの?」


セバスの言葉に葉巻に火をつけながら。


「ああ、貿易やらなんやらの商会かねえ、ここにしかない酒の話も聞いたり、ドワーフ共がこぞって移住してるもんだからな、ちょいときてみたわけよ」


「まあここは色んな鉱物とか新しい技術があるからねえ」


「おまいさんの主にもお近づきになりたいヤツらばっかだからなあ」


「御主人様はなんだかんだ庶民の食堂でご飯食べているから、邪な感情がなければ仲良くなれるよ」


「ちなみに邪な感情があれば?」


「主のお叱りと私たちのお叱りだね」


「それはまた大変だな」


ジョナサンは肩を竦め、とりあえずロックでとウイスキーを2人分頼んだ。



「しかし、ここの酒は濃くていい」


「君は酒豪だものね」


セバスもにこやかにわらう。


「しかしお前も落ち着いたものだなあ、若い時は気に入らない国とかよく滅ぼしていたのに」


「よしてくれよ、私は君みたいに大陸を破壊するとかはしてないよ」


「神罰って便利だよな」


「天使がいうもんじゃないでしょ」


セバスは肩を竦める。


「受肉して商会をしてまあこんな素敵な店を出店できるんだから、まあ稼いでるんだろうが」


「ああ、ちゃんと嫁を作ってガキ2人こさえたな」


「驚いたね、戦いばかりを好んでいたのに」


「惚れた女が出来たら変わるもんだ」


「君の仕える神様にはいったのかい」


「ああ、うちの女神様は部下の天使には優しいからな、なんだかんだ地上務めにしてくれたし、そのうち来るんじゃねえか?」


「ああ、基本的に神様とかは自由だからねえ」


セバスはお酒のおかわりをすると


「…なんとなくだが主に面倒が起こるような気がするな」


「ああ、無邪気な人だからなあ」


「無邪気な神ではないのかい?」


「まあいいじゃねえか、細かい事はよ、お前、明日仕事は?」


「ああ、たまたま休みだけどね」


「じゃあいいじゃねえか、昔馴染みなんだ、付き合えよ」


「やれやれ、では付き合うとするか」


ジョナサンの言葉にセバスは肩を竦めた。




「いや、いきなり何ですか、お姉さん」



「いや、貴方可愛いし、相席したいなあって」


いつもの馴染みの食堂に依頼帰り、いつもの大好物の牛丼を食べに来たミラドゥークの前に席が空いてるのにも関わらず、長い紅い髪を束ねた紅い唇をつけた綺麗な顔をした美女が可愛らしい紅いドレスをきてにこにこと話しかける。


「いや…可愛いとか言われても」


ミラドゥークは戸惑いながら配膳されてきた牛丼を受け取る。


「なんだー?ミラ坊、随分可愛らしいお姉さんに声かけられてんじゃねえか!」


馴染みの食堂の配膳してきた店主に言われるのをみて、紅い髪の女性はくすくすと笑い。


「そうね、彼可愛いから、声かけちゃったわ、店主さん、私もご飯注文していいかしら?そうねーこの街は珍しいものがあるのでしょ?辛くて美味しいのあるかしら?」


「ああ、定番なのは豚キムチ定食とかかもなあ、でもお嬢さん、いいとこの出なんじゃないのか?」


「あら、美味しいものに値段も気品も関係ないわ、私はこのお店で食べたいの、それだけでいいじゃない」


「そいつは違いない」


店主はにこやかにわらうと厨房へと入っていった。



「美味しかったわあ!」


紅い髪の美女はにこやかに笑う。


「なんか僕もご馳走してもらってすいません」


「いいのよ、若い子は年上に甘えたら」


にこにこ笑う美女に首を傾げながら


「でもあれですよね、今日の依頼中、ずっと視線を向けてましたよね?」


「あら、気配探るの上手ね」


「それと空間を切り離してますね」


「そうね、でもお店の人達に何も影響はないわ」


「…そして貴女は神かもしくは属する者ですね」


「あら、貴女は賢い子ね」


存在感が増していく。


「まあ私は分体だから、たいして力はないけど、それなりの力はあるから、でも貴女に危害はくわえたりはしないわ」


紅い美女はにこにこと笑う


「私の部下の天使がこの街でも楽しんでるみたいだから、息抜きにきたのよ」


紅い美女の瞳が妖艶に紅い光が宿る。


「貴方みたいに様々な加護を受ける子って珍しいのよね、英雄の資質持つ子もね」


紅い美女はにこやかに微笑む。


「私は吸血神ミカエラ、貴方恋人はいるのかしら?」


「…はい?」


「最近年下の彼氏作る流行があってね、確かに年下可愛いなあって思うのよ、たまたま貴方見た時、あ、この子可愛い、歳重ねるならいい男になるわあと思って、実際性格も良さそうだし」


「え?」


「女神様を彼女にしてみない?ふっふー!」


紅い美女ミカエラの言葉にミラドゥークは眼を点にさせた。



「…ミラドゥークが色々な女難にあいそうな気がする!」



「マスターは人の事言えないと思いまーす」


セラの言葉にNAVIは化粧をしながらいいかえした。






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