第12話 父親



セバスの部下であるドレイクも勿論悪魔である。だが他の悪魔とはまた違った悪魔である。


悪魔というのは基本的に人が死んだ時に発生する悲しみやまた絶望という負の情念と邪な願望を糧に世界に散らばる魔力と共に生誕されるとされるが。



ドレイクの発生理由は違った名前も知られず戦い抜いたとある冒険者の願いの残滓を元に生まれた。名前のない冒険者。冒険者ギルドが生み出される前のはるか昔、あらゆる苦難や悲しみを乗り越え戦い抜いた英傑。


彼が生きているならば勇者の資格を得られるほどの男だったろう。


彼の記憶はドレイクにも引き継がれている。そしてその技能も、彼の願いの残滓。それは護り続ける事、彼は生まれながらにひとりであった。


ひとりでありながら、剣をとり、多くの仲間を見つけ、冒険者としての存在の最初となった。


あらゆる苦難を自らの剣で切り拓き、未来を生み出し続けた。だが彼は若くして不治の病に侵され30半ばにして死ぬことになった。だが彼は最後まで戦い抜いた。


病に侵され死ぬことを認識しながらも、自ら愛した者達を護るためただひとり当日世界を支配しようとした魔王の大軍と相討った。


大魔王はその勇敢なる冒険者に敬意を評し自らの好敵手として認め、配下達に冒険者の護るべき者達を護るように告げ自身は身体を癒すために深い眠りについた。


大魔王の配下達もいままでしていた侵略行為をやめ、勇敢たる冒険者に敬意を評し、調停を行い平和がなった。


名も無き冒険者の始祖。後にジョン・ドゥと呼ばれた冒険者は転生ではなくとある悪魔の素となり今も生きている。


偉大なる冒険者の始祖の記憶と力を受け継ぎし悪魔ドレイクは。



「セバスさん、事情説明しなくていいんすか?」


「いやいや、それよりまずはなんで娘たちが君に興味あるみたいなことしてんのよ」



上司にからまれていた


「セバスさん、口調変わってるから!」


「そりゃーねー!!久々会った娘達がいきなり部下に女の顔したら気になるよねー!!」


「ちょっと父さん!」


「声大きい!」


2人の娘を見ながらはあとため息をつき


「私だってね、そりゃ子供達と一緒にいたかったけど、やっぱり皆独り立ちしてほしいし、私だってわざわざ老衰をするとかしなくてもいいとは思ったけど、当時私の種族って粛清対象だったもん、そりゃ迷惑かけたくないから泣く泣くいなくなるよー!ちゃんと説明できなかったの悪かったけどさー!」



セバスはビールをひたすら飲みながら


「少なくとも私は子供の幸せを願わない親じゃなかったからねえ!」


「父さん…」


「父さん…」



セバスはふむと頷きながら


「まあ、大分長い間放置してたし、何故ドレイクに興味あるかわからないが、娘達の自由を制限なんてしたくはないし」


セバスはふーむと頷く。


「まあ、ドレイク君も何故かわからないみたいだし、パパは1人飲みをしてくるよ、とりあえず場所変えるなりここでご飯食べるなり好きにしなさい、お金おいとくから」



セバスは懐から金貨を15枚ほどだし


「まあ余ったら小遣いにしなさいね、多分足りると思うけど」



そういうとセバスは席から立った。



「久々にお酒をのんだねえ」


セバスは夜道を歩きながら煙草に火をつける。子供達と関わる前はたまに嗜好品として吸っていたものだが、あまり子供達の健康にはよくないなと思い、禁煙していた。


主が作り上げた黄金郷、主が見せてくれた思念のイメージ通りに主のダンジョンマスターとしての能力にある独立した意識と肉体がある存在が生み出した街。


生活することによってどういう原理だか知らないが、ダンジョンを構築するDPがはいる。1番は命を奪うことなのだろうが、主は無用な殺人はしないだろう。


だが敵対する者には容赦がないのは仕えてからの僅かな時間ではあるが認識している。


清潔な街、下水道は完備され、無法者達とも良き距離で暮らし、子供達もまた安全に生きていける。商人や冒険者達も稼ぐことができ、貿易も盛んだ。


人工的な灯りがまた世界を照らし24時間営業している店もある。



騎士団は最近自警団として名前を変え、主が給金を出し、主直属の部隊という形になっている。


この街には他の街にはない、ライブハウスやスーパー銭湯やサウナ、カラオケ、ファミリーレストラン。まあ色々と主が地球の技術を用いたオーパーツ並の街を作ったが、主曰く



「人間は便利を覚えると堕落も覚えるからね、あえてこちらの素材でも作ったから、技術革新や産業革新をこちらの世界流にしてほしいね、誰か一人に任せると技術は続かないからね」



主の話通り、得心がいくものだなあと、便利になることはよいが、学びを怠れば衰退し、技術はなくなるという事例はこの永い時のなかで見てきた。


この街には職業学校や、読み書きや魔法を習える学校もある。


引退した冒険者や職に溢れた騎士やならず者の就職先に一役買っている。ならず者達は街で暴れ奉仕作業の一環で教師をやらせてみたら、無邪気な子供達に癒され、逆にやる気を出しているという形なので、その話を聞いた各国も実験的に教師制度というのを開始するらしい。



食い扶持を選べずにならず者になったわけだから、街や国がご飯を保証して職を用意してくれるなら、ならず者達も余程ではない限り暴れたりはしないだろうし、この街の人間は基本的に善良というのも相まってか、ならず者達にも優しく馴染むのもはやい。


最初は私も難色を示したが、気持ちを察するのは主の方が得意らしい。まあ話は大分それたが大分人間味がついたなあとわらう。


「おやあ、そこにいるのは名執事セバスじゃねえか」


「そろそろ来ると思ったよ、ジョナサン」


セバスは煙草を携帯灰皿にいれると


「悪友にいい挨拶だなあ」


白いスーツに白髪と黒髪が混ざりあった髪をオールバックにした強面のある職業の親玉のような男、ジョナサンが笑みを浮かべると


「まさか君が天使だなんて誰も信じないだろうねえ」


「けっ悪魔らしくないお前に言われたくねえよ、酒のんでんだろ?久しぶりに飲もうぜ」


「そうだね、君に会うのも久しい、お互いの今を語ろうか」


セバスはにこやかに笑った






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