第11話 何故悪魔は執事になるに至ったか
悪魔というのは存外退屈なものだ。魂を供物にし、召喚者の望みを叶える。
醜悪な者の魂は純度は高いが、悪魔としての格をあげるのには適してはいるが、如何せんまずい。味を気にしない低級な悪魔達ならばいいんだろうが、長く生き最上級の悪魔にもなると、舌も肥え魂も選別しだす、人間の世界の食事も取れるし、執事の真似事も気まぐれにしたし、寧ろ主人を見つけてもいいような気がする。
一応受肉した時にセバスと名乗り、その時に執事の真似事をした、長い不死に近い人生で若き子らが育つ様は美しく楽しかったものだ。
私の部下達も私の真似をして存外楽しかったらしく、執事やメイドという仕事をする主が欲しいといっていた。
ふむそれは良いことだ、ただ魂を咀嚼し、歪んだ者達を滅ぼすよりも若き子らを導くという選択をする方が健康的だ。
なにより魂を貰わなくてもなんらかの強い想いの残滓を受け取るだけでも多少強化は遅れるが問題はないし、受肉すればレベル上げでもなんでもできる。
わざわざ悪魔の昔の流儀にそってまずい魂を喰らうなんてしなくてもいい。
そうと決まれば主を探そう、勿論私は悪魔とはいえ部下を大切にする悪魔なので、きちんと交渉も兼ねていくことにしましょう。
そう決意して1000年の月日が流れましたかね、色々と面倒で醜悪な願いを持つ者を滅ぼしたり、気まぐれに難民を救ったりなんだりしましたかねえ。
非常に退屈でしたが、ふいに召喚陣の気配を感じまして探った所、何とも清廉で清き魂を持つ方がいるのかと、本来喚ばれる存在だった悪魔にストックしていたいくらか味の良い魂を分けて交代してもらったと共に部下を呼び寄せ、主の前へと現れました。
そう逢魔の森の王となったばかりのセラ=ムトウ様に、彼の方は竜でありながら慈愛に満ち、多くの存在を従えてました。
まさに王たる器、悪魔は魂の匂いを敏感に感じ取ります、竜王まで至る竜は比較的理性的ではありますが、自分の興味ある者以外はあまり気にはかけません。
ですが御主人様は様々な小さな事でも気にかけ、わずか1年ほどで弟弟子と共に街を作り上げました、御主人様のダンジョンマスターとしての力もあるのでしょうが、それでも多くの移住者が現れるのは御主人様の人徳にもよることでしょう。
若き竜としてまだ拙い部分もあれど、それは老年たる私がサポートすればよいこと。
御主人様を主にし過ごすなか私たち悪魔にも進化する者が現れました。魂に惹かれ信仰を持つ事で種族進化をする者達も現れます。御主人様にお仕えして進化した私の種族は。
守護聖悪魔大公と守護聖悪魔
聖なる力に目覚め守護の力を持った悪魔となりましたね、基本的に悪魔は攻撃系や幻惑系や魅了系に特化した種族ではありますが、守護の力を得たお陰で回復や支援系統の力も得ることになりました。
私としましては実に有難い、まだ力目覚めぬ子供達を守ることが出来ますからね。
私は家庭はもったことはありませんが、はるか昔に孤児院をつくり院長をしていたことがありました。
その時養子として引き取った2人の子と家族として過ごした覚えがあります。私はその当時人間として過ごしてたので老いと共に老衰した事にして亡くなったことにしました。2人の子らは長命種であり不老の血族であるので生きてるとは思います。というか生きてました。
冒険者ギルドエントランス
「父さん?言い訳は?」
目の前の着物をきた長い黒髪を後ろに束ね、美しい紅い瞳をもった、長身の美しい女性は刀を向けながらにっこりと笑った。
「はは、ミサト、元気そうで何よりだよ」
セバスは顔を青くしながら冷や汗を書いてる
「姉さん、まずは話聞こうよ」
穏やかな笑みを浮かべた青い髪のポニーテールの可愛らしい青いローブを着た女性がおどおどと話しかけていた。
「マリネの言う通りだよー、ほら皆驚いてる」
セバスが言うとため息をつきミサトと呼ばれた女性は刀を降ろす。
「まあ、久々の家族団欒だ、食事でもしながら話そうか」
セバスがにこやかに笑うと2人はうなづいた。
「…んで、なんで御息女達と話すのに俺が必要なんすか」
レザージャケットを着た眠たげな茶色の目をした同じ色の短髪の細身の男は首をかしげながらため息をつく。
「それは僕も聞きたいよー、ドレイク君、キミ最近執事業務の他に冒険者としても活動してるよね」
「ああ、それはセラ様が子供達も自衛できるように技術やらなんやら教えるように指示だしてくれたからっすよ、てかセバスさん、御息女と大事な話するのに24時間営業の居酒屋って、うまいすけど」
「ああ、御主人様が色々考えてたね、子供達が強く元気になるならいいね、居酒屋おいしいし、気軽じゃない?」
「いや部下を話にいれたりする時点であーまあいいっすわ、とりあえず腹が減ったんで頼んでいいすか」
「そうだねえ、とりあえず生で、皆ビールでいいかな?」
「問題ないっす」
「だ、大丈夫」
「う、うん」
セバスは2人の娘の様子をみて首を傾げる。
「俺の顔になんかついてます?」
「いえ」
「なんも」
ドレイクは首を傾げながら笑顔を向けると同時に
「あの!」
「彼女とか!」
「いますか!?」
「…え?」
2人の言葉に絶句をすると同時に
「ドレイク君、お話きいていい?」
「なんもしらないっすよ」
上司の絶対零度の雰囲気にドレイクは冷や汗をひたすらかいていた。
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