第8話 少年は竜達の宴に相見える
「いいね、地球だっけか?別世界の楽器はいい音がなる」
黄色の髪を逆立てた黒い色眼鏡をかけた派手な赤いジャケットをきた、赤いズボンをはき金色のブーツを履いた男は楽しげに赤い弦楽器を弾いている。
「まあ雷属性だからライシュさんと相性いいんでしょうね、雷の竜王だし」
「テンション低いなあ、セラ、なあミラドゥーク?」
「そりゃアレックスさんと戦ってるなかこっそり見ていたんだからテンションも低くなるよ」
「言うねえ、ミラドゥークも、なかなか竜王に意見する人間もなかなかいないからな、いいこった」
ライシュと呼ばれた雷の竜王はケタケタ笑う。
「人化してるとはいえ、竜王達が集まるのも珍しいですからね、全員ではないけれど」
黒いスーツを着た黒髪の紅い瞳の優しげな長身の美人がにこやかに微笑む。
「アバドン自体も現れるの珍しいからな、闇だけにあまり外に出ないからな」
ライシュの言葉に闇の竜王である黒髪の美女アバドンはにこやかに笑う。
「基本静かなとこで本を読むのが好きなのよ、最近はアリアちゃんに読み聞かせしてもしてるし」
「ああ、アルテラにも懐いてるミラドゥークの妹か」
「どの種族も子供は可愛いわ」
「星帝竜のおっさんも若い番を見つけていちゃこらしなながら子供面倒みてるみたいだからなあ」
「あの方は未来ある子供達の世話をするのが好きだからね、血の繋がりは多分無いでしょうが、どことなくセラ君に似てるわね」
「まあたしかに、男前なのはセラの方だが、それよりもアレックスさん助けた方がよくね?」
「まあ久々の兄とのじゃれ合いだしねえ」
「お前も大概だな」
思い切り馬乗りになって殴られるアレックスをリュウケンは爆笑しながら見つつ、若干引きながら無表情で兄を殴るシルビアを見ながらセラも見ていた。
「いやあ、妹は元気だねえ」
「あんだけ殴って怪我ひとつないとか兄様バカなの?」
シルビアは驚きながらアレックスを見ると
「まあ、色々それっぽいのがあるからね!」
「((それっぽいのってなんだろう))」
今この場にいる全ての者が首を傾げながらアレックスのドヤ顔を見ていた。
とりあえずセラとアレックスの試合が終わり、シルビアが心配してきたのできちんと礼をいったあと、件の告白に似た宣言は保留にしてもらった。
仮にも竜神の血族が安易に婿をとるとなると、様々な要因になりかねないし、まずは友達からということにした。
シルビアは思うことはあるとは思ったが、今はとりあえず折れてくれた。一応宣言した事である種の脅威はなくなったと思われるのだが。
「師匠、なにしてるんですか?」
リュウケンはいつの間にかカセットコンロに似た魔道具を用意しながら空間から野菜やら肉やら酒やらを出していた。
「あん?水炊き鍋の準備だよ!竜王全員はいねえが、ミラドゥークも雷と闇と原初の竜兄妹と俺とお前いんだ、俺はもう腹減っちまったよ!料理すんぞ!弟子!」
「ここ、城の玉間ですよ?」
「知らん知らん!とりあえずお前もアイテムボックス取得してんだろ?中身出せや!」
「追い剥ぎですか?はあ、仕方ないなあ、下準備は僕がやりますから、おちついてください」
「あん?ちぎっていれたらいいじゃねえか!ほらお前んとこの映像だっけか?リュ〇ジのなんたらレシピ!」
「あの人でも最低限包丁使いますよ!!」
セラとリュウケンのやり取りを見ながらミラドゥークは笑う。
「先生もセラ兄も楽しそうだなあ」
「君は混ざらないのかい?」
アレックスはにこやかにミラドゥークに声をかける。
「いやあ、なんとなくですね」
「仇はとれたから少し気が抜けたところかな?」
アレックスの言葉に頷く。
「それはいけないね、少年たる者、快活に自らの人生を楽しむべきだ、僕たちより寿命が短いなら尚のこと、ヒトは素晴らしい、善き者も悪しき者も瞬く間に成長する」
ミラドゥークはアレックスの言葉に耳を傾ける。
「セラ君、彼は僕達と同じ竜でありながらヒトの性質に近いね、竜は基本的に関わりある者以外無頓着だ、だが刃を交えて感じたが彼は感情をよく出し、裏表がない、老獪な竜すらも毒気が抜かれるほどだ」
アレックスはにこりと笑う
「慈しみを持つ竜なんて性質的に非常にめずらしいからね、その珍しいなかでも彼は更にだ、だからこそ妹も惹かれたのだろうがね」
微笑みながら隣に経つシルビアを見ながらアレックスは笑う。
「短い中で君はセラ兄といった、少なくとも慕っているということだ、それに彼からもらった物もあるならば、相応しい存在になるのも大事だろうさ」
ミラドゥークはにこやかにアレックスに笑みを向ける
「彼は君を身内だと感じているはずさ、兄の背中を追い成長するのもまた弟の役目さ、種族は違うとしてもね、さて、これからきっと英雄になる君へ僕からもプレゼントだ」
アレックスはミラドゥークの頭に手を添える。
「偉大なる竜の始祖たる神の第一子アレックス=ドラグーンが与えるは偉大なる竜の一端、破壊する様々な困難を打ち砕く覇たる力を与えよう、自らの苦難を迷わず進め、偉大なる道を私か導こう」
ミラドゥークの体に銀色の光が纏いつき、右手の甲に竜の銀色の顎の紋章が浮かぶ
「…これって半竜に至る紋章じゃ?」
「よく知ってるね、そうだね、竜神に連なる血族から認められた証だね、人の枠から外れて竜人に至る紋章、更に上の存在に認められたら君も晴れてお仲間だ」
「あっという間に人外に…」
「はっはっ、人生はいくらでも多彩に変わるものさ、少年、僕は君を見た時に可能性を見た、長く生きるとね、退屈なものさ、だからこそ新たな竜王と共に新たな世界を見せてくれ」
アレックスはミラドゥークに肩を置く。
「さあ、セラ君の鍋ができたようだ、いこうか」
「はい、アレックスさん」
「物分りがいいこは素敵だよ、少年」
アレックスの言葉に頷きミラドゥークはセラ達がいる場所へと足を向けた
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