第7話 剣閃閃き語るは刃

第7話


「速度上昇、膂力上昇」


「ふむ、無詠唱も操るのか、いいね」


カンッカンッと斬り結ぶ音と共にニコリと笑いながらアレックスは相対する。


「ではこちらも重量上昇」


アレックスの刀に重みが加わると同時にセラは振り上げる。


「身体強化か!判断が早いね!」


「それはどうも!速度上昇二十倍加!」



セラの姿が掻き消えるがそれすらもアレックスは対応する


「いいね、速度の重ねがけか、力の差もきちんと把握してる、だがまだ足りないな」


アレックスはそう言うと同時に紫電を纏う。


「雷速上昇、身体強化速」


「土壁構築、身体強化防」


アレックスの紫電がセラの体に纏われた土の鎧にアレックスの刃が伏せがれる!


「ふむ、全属性を操れるだけあって多彩だね、魔法速度も速い、人化状態の練度も上々だ」


にこやかにアレックスは笑う。


「だがそれくらいではないだろう?この程度でシルビアに一撃を与えられるとは思わない」


「僕はただの鍛冶師なんですがね」


「若者よ、仮にも君はこの世界において称号にも認められた竜王の一柱だ、戦いもまた生活の1部と思いたまえ、それに若き竜にしてここまで目立つ君を放っておく者もそうはいないさ」


好戦的な笑みを浮かべながらアレックスは眼を向ける。


「僕も最強の存在の1つとして語られるが、最強というう存在は若き新たな力に打倒されるものだよ」


「買いかぶりすぎですよ」


「謙遜しないでいいさ、本気ではないといえ、僕に着いて来ている、さて若き竜に1つ指南をしよう」



アレックスは刀を水平にし拳を向けると


「耐えなよ?竜気閃」


そう言うと同時に赤い閃光がセラを襲う!



「おや、いいね、耐えたかい」


「っ!!」


セラは体に煙を纏いながら片膝をつく。


「魔力を纏いダメージを軽減させたのかい、いいね、そして再生をイメージした魔力の行使か、器用なものだ、だがまだ足りないな、まだだな」


アレックスは刀に魔力を纏う。


「竜にはそれぞれ特有の魔力があってね、基本的には竜気というんだが、先程の技も自らの竜気を交えて放ったたという単純なものなんだが、混じり気のない力だけあって効くだろう?」


「説明長いっすよ、アレックスさん」


「いいね、なかなか砕けた口調になってきた、若者はそうでなくては」



アレックスの言葉を聞きながらセラはとりあえずイラついていた。いきなり現れたシルビアの気まぐれに付き合い戦うはめになり、運良く一撃を与えたら気に入られ、それはまあいいとして、勝手に番にされられそうになっている。


転生してきて神には自由に生きていいと言われ、お願い事はあるものの。


やりたかった鍛冶やらダンジョンを営みながらスローライフもいいなあと考えたら、シルビアの兄と名乗るアレックスと試合をするはめに。


全くもって度し難い、竜社会の事など知るか、見た目が若い老練な奴らの話など知るか。


「あーキレちまったよ…」


セラは基本的に穏和であり怒ることはない、彼を怒らせたら大したものといっていい。


この世界は造りあげたものにも命が宿る、それは自らが造りあげた物ならば尚のこと。


「起きろ、零、お前の銘だ」


叫びにも似た鳴き声がセラの黒い剣から響く。


「さあ仕切り直しだよ、先輩」


セラの瞳が金色に染まりセラの黒い魔力が迸る。



「煽りすぎたかな?」


アレックスは苦笑しながら刀を構える。




「部分強化、重力20倍」


アレックスの刀に打ち込むたびに重力の重みが襲いかかる!


「やるね!重力下降も重ねがけか!」


ガクンとアレックスは膝を降る瞬間を狙いセラの拳が襲いかかる!


「カハッ!」


「雷刃」


ノーモーションからの疾速の雷の突きを放つと同時に手を天に向ける。


「天が哭く…メテオ」


「星すらも堕とす!?」


空が暗くなりアレックスはそう言うと同時に堕ちてきた隕石を破壊する!


「おー隕石壊すなんて豪気だなあ…」


「ちょっ!ちょっとシャレになんないよ!なんとか出来るけどさぁ!!」


「素が出てるぞ、アレックス、いやー爆笑するの耐えるの苦労したぞ」


リュウケンはケタケタしながら見ていると


「まあ勝負は決まったみたいだねえ」


「間違いないな、その剣、チートじゃね?」


「見たいですね、どんな強大な力でも数分間魔力や気力を封じられる、ていうか素の方が話しやすいですよ、アレックスさん」


「まあ力ある竜種は魔力や気力なくても、なんとかなるが、他の種族は難しいだろうな、マジ?素敵なお兄さん風にしてたのに」


「もう滲み出る空気で扱い方決めましたよ」


セラははあとため息をつく。


「まあため息つくなよ、後輩、しかし魔法も結構扱えるとか優秀だな…」


アレックスは顔を青くしながらギギギと後ろに視線を向ける。


「この坊やについてきてみれば大層楽しんでおるようだな、兄様」


「シルビア…兄さんはな」


「問答無用」


ミラドゥークと共に現れたシルビアに思い切り頬を叩かれ空を飛ぶアレックスを見ながらセラはまたため息をついた。

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