05.やってることは基礎学習
完璧令嬢も殿下たちも時間内にしっかり戻ってきて、何事もなかったかのように次の講師が入ってくる。えーと次は…………何だっけ?
「ハイどーもー。次は楽しい“みんなの語学”の時間だよー」
ゲッ何この胡散臭い兄ちゃんは。
つーかなんでアンタまでそのムチ持ってるのよ!?
「さて、それじゃあ早速。今この西方世界で一般的に共通言語として使われる現代ロマーノ語だけど、その元になったのは古代ロマヌム語。そこまではオーケー?」
「「「「「はい」」」」」
いやなんで全員当たり前のように返事してんの!?
「では唯一返事のなかったコリンヌ嬢。古代ロマヌム語と現代ロマーノ語で呼び名が違うのはなーんでだ?」
「…………は?」
いや知らんし。言われてみたらなんかちょっと不思議だけど、別に興味ないし。
「はいダメー」
バシン!
「痛っだぁ!?」
頭叩くか普通!?
「はいではエドモン殿」
「はい。古代ロマヌム語と現代ロマーノ語では文法や動詞変化などはほぼ変わりませんが、発音と表記、それに文字の数が異なります。ロマーノとは古代帝国の首都であった、現在のエトルリア連邦の都市フォロマーノを指しますが、古代帝国時代にはフォルマヌムと呼ばれていました。『フォルマヌム』の発音が変わることにより『フォロマーノ』になる、つまり『ロマヌム』と『ロマーノ』は同じ名詞であり、現代語には現代発音を、古代語には当時の発音を当てて読んでいるだけです」
「はい正解」
いやなっっが!セリフなっっが!
そんな長文よく噛まずに言えるわね!いつも思ってるけど、エドモン様無駄に頭良すぎない!?
「オーギュスト、エドモンの奴は今なんて言ってたか、分かるか?」
「分からんお前の方がおかしいんだが?」
あ~よかった!
「はいでは解ってないベルナール殿。現在の西方世界各地で公用語として用いられている言語を全て述べよ」
「えっ」
ベルナール様はちょっと考えてから答え始めた。
「現代ロマーノ語、西部ガロマンス語、北部ゲール語、南部ラティン語……以上だ」
「はいダメー」
ベシン!
「ぐっ……、何故だ!?」
「古代ロマヌム語の系譜でないイリシャ語とアナトリア語とフェノスカンディア語を忘れとるわバカ者」
「はいオーギュスト殿も不正解」
ビチン!
「くっ……しまった、それ以外にルーシ語があった……!」
「そうそれ」
いやベルナール様はともかくオーギュスト様が間違うような問題、あたしに答えられる訳ないよ!?
つうか間違ったら先輩たちも叩かれるんだ!?ちょっと厳しすぎない!?もしかして殿下が間違っても叩くわけ!?
「いやあ、さすがに地獄のRBCは一味違うな」
殿下、お顔が引き攣ってますよ……?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「っと、もう終了ですかー。残念。
では次はダンスレッスンなので、速やかにレッスン室へゴーして下さいねー」
胡散臭い兄ちゃんはそう言ってそそくさと出て行く。
あー、ダンスなら任せて!得意!
全員で連れ立ってレッスン室に指定された部屋へ移動するあたしたち。さっきみたいにオバサンに叩かれたらイヤだから、完璧令嬢のマネして走らないように、でも可能な限り早歩きで頑張って移動する。
いやきっつ!マジ超きっつ!なんでそんな済まし顔で全員これ出来てるわけ!?
それでも何とかレッスン室へたどり着き、用意されていた控室で王宮の侍女さんたちに手伝ってもらって練習用ドレスとダンスシューズに着替える。そしてダンス講師が入ってきて…………ってアンタかいっ逆三眼鏡!
「はい、ではまず基本のワルツの動きをブランディーヌ嬢と……そうですね、ではエドモン公子にお願いしようかしら」
「「はい」」
呼ばれたふたりが中央に進み出て、備え付けのピアノで逆三眼鏡が奏でるワルツの定番曲に合わせて踊り出す。
ってオバサン楽器までできるわけ!?無駄に能力高くない!?
「はい結構。素晴らしい演技でした。では次、コリンヌ嬢とベルナール公子」
「了解した」
「えっ、え?」
なんでベルナール様!?この人ダンスが壊滅的にダメだってめっちゃ噂だから踊った事ないのに!ウソでしょミスできないじゃん!
「コリンヌ嬢。スマンがリードは任せた」
「いや無理ですよう!あたし相手に合わせて踊った事しかないですぅ!」
そんなこと、ダンス始まる寸前で言われたって、ムリぃ〜!
「…………もう結構です」
ダンスは結局、曲も半ばで冷めきった声を上げたオバサンによって強制的に止められちゃったわ。まあそれまで散々ムチで叩かれて、これ以上まともに踊れやしないんだけど。
ってかアンタなんでムチ持ってあたしたちに張り付いてんのよ!?ピアノは!?
……って思って見たら、いつの間に入ってきたのか演奏者の女の人がしれっとピアノ弾いてた。なんでよ!?あたしたちの時もオバサンが演奏してれば良かったのに!
「ダンスにおいてもっとも重要なのは、互いに相手を信頼して
なのに何ですか貴方がたは。どちらも相手に押しつけあって、協調性などまるでないではありませんか。先ほどのブランディーヌ嬢とエドモン公子の何を見ていたのですか!?」
なんかオバサンがキンキン言ってるけど、叩かれた背中や腰や手足が痛くってそれどころじゃないんだけど!
「ちなみにダンス中にわたくしが叩いたのは全て
分かんないわよ!ダンスなんて適当に踊って場を壊さなきゃそれでいいじゃん!っていうかそもそもあたし殿下としか踊りたくないし!
「……はあ。その様子では解っていませんね。全く、まだ殿下とオーギュスト公子のほうが見ていられます」
と呆れたように呟かれて、見たら殿下とオーギュスト様が踊ってらした。
いや男同士!?ってか止められてもピアノ鳴り止まないなあって思ってたら、あんたたち踊ってたのね!?
「…………なあオーギュスト」
「なんです?殿下」
「私たちは、何故踊っているのだろうね?」
「他に相手がいないからでしょう?残っているのは私たちだけですからね」
「どうせ踊るなら、ブランディーヌのほうがまだマシだったな……」
「私だって好きで女性パートを踊っているのではないのですがね!?」
なんかふたりしてブツブツ言ってるけど、なんだかんだで息合ってるように見えるし意外と楽しそうにも見える。
ぐぬぬ、ちゃんと踊れたら男同士でもある程度サマになるって言いたいのかしら?なんかちょっと、ムカつく!
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