第14話 いぶき姉さんのキモチ
「姉さん、どうして・・・。」
「どうしてって、最近シテなかっただろう?あの子との接触もあったみたいだし、そろそろ慰めてあげないとと思ったんだよ?」
いぶき姉さんの言ってることは間違いではない。入学式の前日にここに来た時以来、その慰めはしてなかった。
けれど、それが必要にならないよう僕なりに頑張って制御してきた結果であって、こんな強制的にしてもらうものではないはずだ。
「だからって、わざとこの写真を見せるなんて・・・。」
「んー、君はやっぱり鈍いよね。さっきのは建前だって気づいてはくれないのかい?」
鈍い?
建前?
これは、どういう意味なんだろうか。あの日以来、いぶき姉さんは僕の衝動が起こるとそれを慰めによって鎮めてくれた。
僕は、最初にああなってしまったからいぶき姉さんの責任感でその後も慰めをしてくれているのだと思っていた。
もちろん、付き合っている訳でも恋愛関係にある訳でもない従姉にこのような行為をさせていることには罪悪感があったが、衝動を鎮めるために、いぶき姉さんが受け入れてくれている現状に甘えざるを得なかった。
「建前・・・って、どういうこと?」
「私の口からをそれを言わせるんだね。いいよ。すべて白状してあげる。」
いぶき姉さんは、そう言いながら蹲る僕を正面から抱き、首筋に唇を乗せる。
そしてささやくように耳元で語り始めた。
「私だって、思春期の女の子なんだよ?君が幼いころから弟のように可愛がってきた従弟だからといって、どうして簡単に身体を委ねたと思う?あの日、私は君の手から逃げ出すことだってできた。それからも君を避けて過ごすことだってできたんだ。」
そう言うと、僕の状態を起こし、後ろにあったテーブルに腰を掛けさせる。
いつものように大腿の間にその細い腰を滑り込ませたら、一つずつ、シャツのボタンをはずしていく。
「でも、一人の女の子のキモチを考えてもみてくれよ?好きでもないただの従弟のためにこんなことすると思うかい?」
いぶき姉さんのその問いには答えられなかった。
今まで、いぶき姉さんが慰めという行為をしてくれていた理由。
たまたま、あの日に居合わせただけではあるが、いぶき姉さんは何らかの責任を感じてこの衝動の面倒を見てくれていたんだと思っていた。
そこには男女の感情も欲もなく、ただ、その現象への対処をしてくれていたんだと思っていた。姉のような存在として、怖ろしく手のかかる弟の面倒を見てくれていたんだと。
「ここまで言えばわかるだろう?私にだって、感情があるし欲もあるんだよ?君のキモチは知っているけれど、私のキモチを慰めるためのギブ&テイクを求めるくらいの権利はないのかな?」
そうだ。考えればわかることだった。
なんの感情も欲もないとしたら、女子高生が負う責任としては重過ぎる。
本来僕は、軽蔑され忌むべき相手なのに。
「姉さんは、それでいいの?僕は・・・、姉さんに甘えてるだけだ。結局、返せるものは何も残らない。」
「私はそれを望んだんだ。いや、君の弱みを利用したと言われても仕方ない。でも、今だけは許してくれるだろう?ならば、私は喜んでこれを選ぶよ。」
もう僕に拒否権はなかった。
いつの間にかシャツは脱がされ、いぶき姉さんの下着も外されて、上半身すべてが触れ合っている。
いぶき姉さんは、首筋から下へなぞるように唇を這わせながら、僕手をつかんで胸の膨らみへと誘導する。
いつもなら、ぼんやりして理解できない行為も、今はその感触をしっかりと認識できる。
「あっ、んっ//、」
「姉さん、、姉さん・・・」
二人から発する熱で、乾いた暗室が蒸し暑くなっていくのがわかる。
「姉さん、もう・・・。」
「いいよ、私がピル飲んでるのは知ってるね?」
過去にいぶき姉さんから何度か聞いたその言葉が何を意味しているのか、半分くらいしか理解していなかった。
でも、今はその意味がしっかりと理解できる。
理解できたところで、冷静な判断としてはきっと間違っているのだが、僕は頷くことしかできない。
次の瞬間には、いぶき姉さんの叫び声が暗室に響いた。
「はぁ、好きっ!航太!愛してるっ!」
頭がぼーっとして、身体に力が入らない。
姉さんの言葉に、高揚感と罪悪感が同時に襲ってきたところで、ゆっくりと床に寝そべる。
冷たい床が異様に気持ちよくて、衝動が引いていくのがわかる。
うっすらと目を開けると、窓から差し込む光がだいぶ傾いていて、無言でゆっくりと制服を着ていいく姉さんを茜色に染めているのがわかった。
制服のシャツに袖を通して、襟から長い髪を引っ張り上げたときに見えた姉さんの頬には、うっすらと涙が伝った痕が光ったように見えた。
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