第9話 幼馴染妹

「はーい!これで撮影終了ね!うちの航太君のカメラマンぶりすごかっただろ?写真の腕も私が保証するから納品を楽しみにしててくれたまえ!はっはっーん。」


 先日の水泳部の撮影を皮切りに、僕といぶき姉さんは連日、いろんな部活の撮影にいそしんでいた。

 陸上部、バスケ部、バレー部、バドミントン部、サッカー部、野球部と体育会系をこなし、演劇部や美術部、吹奏楽部など文化系の部活からも依頼があって、各々の看板部員を被写体モデルに撮影していった。

 

 最後の撮影を終えて、部室へ帰り道。

 

「それにしても、被写体は女子生徒ばっかりなんですね。なんだか、気疲れしましたよ。」

「まぁ、我が校は男子生徒の方が少ないし、部活は男女別の大会出場時以外は、一緒に活動するのが伝統からね。どこも男子部員の確保が重要なんだよ。」

「そういうもんなんですか。ま、僕としても美人の先輩方を被写体もでるに写真をたくさん撮れたのはいい経験になりましたけど。それにしても、行くとこ行くとこで僕のこと推しすぎじゃないですか?いちいち恥ずかしかったんですけど。」

「そりゃー、をみんなに見せびらかせるチャンスだからね。キミを売っておけば、今後の写真部の活動にもいい風が吹くだろうし。うふふ。」

「今後の活動とは?」

「一学期は、体育祭や球技大会での撮影部隊としての活動が主かな?でも、一番は二学期に入ってからの学園祭だよ。」

「学園祭で何を?」

「学園祭では、写真部としてこの学校の写真集を自主製作して販売するんだ。これは我が部の伝統なんだが、写真部が公式に撮った写真は、原則、その写真集への掲載が許諾されているんだ。だから、学校行事でたくさんの写真を撮れれば、その分良い写真集にすることができるし、その売り上げはもちろん部のコレになるんだよ。」

 

 いぶき姉さんは親指と人差し指で丸をつくり、どや顔で説明する。


「はっ、それで、今から僕を売って、被写体として協力してくれる生徒を増やそうとしてるんですね!!」

「しょーゆーこと♡」


「(この姉さん意外と金にがめついな。)」

 なんてこころの中でつっこみを入れて、部室に戻ったところで今日の活動は終了となった。


 帰り支度を済ませて、いぶき姉さんの様子を見るとまだ帰る気配がない。


「帰らないんですか?」

「う、うん、ところで、最近は大丈夫なのかい?」

「アレ?・・あ、ええ、おかげさまで奏多が氷の姫ああなので、制御できてます。」

「そ、そうか・・・それならよかった。ふんっ、じゃあ、今日はもう帰ってくれて構わないよ。」


 いぶき姉さんが少しむくれていたような気がしたけど、帰れと言われたからには帰るしかない。



 ◇◇◇



 学校帰り、一人で駅までの道を歩いていると後ろからドタドタと物騒な気配がして、次の瞬間には背中にぼよーんっとやわらかい衝撃が走った。


「うわっ!」

「コタ兄ぃー!!!今帰りっ?」


 背後からのタックルによろめきながら、衝撃を加えた犯人を見ると、奏多の妹、凛花りんかだった。


「おい、急にぶつかってきたら危ないだろ?怪我したらどうするんだ!!」

「むぅ、そんなに怒らなくてもいいでしょー。大丈夫だよ!ちゃんと高性能のエアバックついてるもん!」


 エアバックとは?と思ったが凛花は自慢げに胸を張っていたのでその意味はすぐにわかった。


「いや、女の子が自分で言わないだろ、普通。」

「ん?なんのこと?エアバッグって何のことだと思ったの?もしかして今コタ兄がいやらしい目で凝視してる私のお胸のことを言ってるのかしらー??」

「い、いやそんなんじゃないけど・・・」

「けど?なにかなー?」


 そんな感じで、いきなりエンジン全開で僕をからかってくる。

 本当に昔からそういうところは変わってないし、性格も顔も奏多と似ていない。


「あー、今、お姉ちゃんと似てないなーって思ってるでしょ?確かに、お姉ちゃんみたいに綺麗じゃないし背も小さいけど、おっぱいは私の方があるんだからねっ!!」

「なんのアピールだよっ!?」

「ん?海外あっちで健やかに成長してきましたアピールだよ♡」

「そーですかい。」


 そんな風にニタニタと笑う凛花は、奏多に引けを取らないくらいの美少女だ。

 奏多の妹だから僕も本当の妹みたいに思っているけど、中三の春にいきなり現れた転校生がこんなに可愛かったら、同級生の厨房たちはさぞ浮足立っていることだろう。

 しかも、小さくて華奢なのに自慢のエアバッグは見事に膨らんでいる。

 幸い、奏多のように僕の衝動の対象にはなっていないから、こうやってふざけたやり取りができるし、僕にも変わらない部分があるんだと安心できる。


「それより、お姉ちゃんは一緒じゃないの?同じクラスって聞いたから、お姉ちゃん絶対帰り道とかコタ兄を誘ってると思ってた!!」

「ん?そんな誘われることなんてないよ。奏多も僕も部活があるし、入学式以来ほとんど話してもいないから。」

「えーっ、そなの!?あー、それでか!なんか、最近お姉ちゃんあんまりおうちで笑わないんだよね。面白いテレビ見て笑ったと思っても慌てて無理やり真顔に直してる感じで。」

「あぁ、それな。学校でも無表情で氷の姫って呼ばれてるぞ?」

「あははっ!氷の姫ってなにそれ!?お姉ちゃんがそんな訳ないじゃん!!あ、せっかくだからおうちに帰るまでお姉ちゃんの話聞かせて!」

「あ、まあ、方向も一緒だし、別にいいけど。」

「わぁーい。じゃあ、行こうー!!」


 よくわからないが、楽しそうだしいいか、と、並んで駅までの道を進むことにした。




※※※※※※※※※※※※※

読んでくださるみなさま、いつもありがとうございます。

作品を書くのは初めてで、手探りで書き進めておりますが、少しでも多くの方の目に留まったら嬉しいです。


時々、遡って誤字脱字の修正したり、タイトルをいじったり、多々粗相もあると思いますが引き続きお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。


常に読者の方の反応が気になってしまう性格なので、気に入っていただけたら、評価、コメントも是非よろしくお願いいたします。


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