第28話

アルスが領都に来たなら武具を見てみたいとのことでデートを兼ねて武具店をまわっている。


領都の武具店は王国でも有数の品質の良さを誇っており目がキラキラしている。


美少女である私と話していた時よりも楽しそうにしているのを見ると内心は複雑だ。


悔しくなんてない。


だって、中身はおっさんだもの。


品質の良さは折り紙付きなのだがそれに比例してお値段も目が飛び出すようなお値段だ。


いくつかのお店をまわったのだが少しメインストリートから外れたお店でアルスが足を止めた。


どこか寂れた感じを受けるお店だが商品はどれも1級品とのこと。


その中でも一つの剣を買うか悩んでいるようだ。


A級冒険者としてかなりの稼ぎがあるアルスでもそうやすやすと手が出せないお値段のついている剣だ。


なんでも神鉄と言われるダンジョンで取れる希少な鉄が使われているのだとか。


そこで閃いた。


この剣を送れば目的である繋がりがより強化されるのではないかと。


というわけでお付きの者に視線を送ります。


お付きの者の顔が少々ひきつっているようですが気付かないふりをします。


お付きの人はお店側と交渉をはじめました。


アルスは遠慮しようとしていますが逃がしませんよ?


「アルス様。ずっとお店で飾られているよりも剣も使って貰った方が喜ぶと思います」


笑顔で逃げ道を塞ぎ無事に剣はアルスの手に渡りました。


ミッションコンプリートです。


帰りの馬車でアルスは終始、新しく手に入れた剣を撫でています。


それを微笑ましい気持ちで眺めつつ心の中でガッツポーズ決めます。


公爵家が送った剣でアルスが迷宮都市で活躍してくれれば公爵家の株も上がるというものです。


家に帰るとお父様であるイーリッヒが目聡く剣に注目しました。


私がにっこり微笑むと意図を察してくれたのか上機嫌でした。


これでアルスの引き込みはほぼ完了です。


数日後、アルスは何度も頭を下げつつ迷宮都市へと帰っていきました。


これで久々に訓練を再開できます。


令嬢としては失格なのかもしれませんが体を思いっきり動かすのは楽しいです。


思う存分体を動かした後はゆっくりお風呂に浸かります。


訓練でこわばった体にお湯が滲みこみます。


そんな幸せな日々を送っていたのですが次のお見合い相手がすぐ来るとのことです。


公爵家の血筋を引く傍系の方だそうです。


いわゆる先祖返りで魔術と武力に優れたお方なのだとか。


ここで以前から考えていた計画を実行に移そうと思います。


お見合い相手の方には申し訳ないですが自分の自由には変えられないものね。

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