第9話
数日が経ちいよいよお見合いの相手がやってくるらしい。
メイドさん達が張りきって準備をしている間大人しくしている。
ドレスだけは妥協せず露出の少ない物を選ばせて貰ったが女性の準備って大変なんだなと実感する。
長時間、髪を弄られ化粧を施されるというのは中々の苦行だった。
しかし、その甲斐あってか鏡で見た自分は天使かと思わせる程の変化を遂げていた。
女は化粧で化けるとはよく聞く話ではあるが元が良いとさらにその上をいくらしい。
現実逃避をしていても仕方がないので気合を入れてお見合い相手が待っているという部屋へと向かう。
本日のお相手はセバスチャンが言っていたオッテンハイム侯爵家の次男であるセルゲン・ユーステル・オッテンハイム。
今更だが失敗しないか不安な気持ちで心臓がバクバクしてきた。
落ちつけ。
深呼吸だ。
何度か繰り返すとどうにか平常心が戻ってきた。
先導するメイドが扉をノックしてから開く。
部屋には両親が既におり談笑をしていたようだ。
スカートをつまみ片足を引いてカーテシ―を決めながら挨拶する。
「初めまして。リーシア・フーゲル・エルシュタインです」
「セルゲン・ユーステル・オッテンハイムです」
見たところかなりのイケメンである。
これで魔法の才もあるというのだから世の男性からしたら不公平だろう。
「挨拶はそれぐらいでこちらに座りなさい」
父親であるイーリッヒに促され示された椅子に腰を下ろす。
どうやら悪い人ではなさそうだ。
「噂にたがわぬ美しさですね」
真っ直ぐに褒めてくるが勘弁してほしい。
何度も言っているが中身はおっさんである。
歯の浮くような言葉を言われると背筋がぶわぶわする。
「ありがとうございます」
「後はお若い者同士ということで我々は失礼します」
そう言ってイーリッヒとリーゼロットは席を立ち退室していった。
「セルゲン殿は魔法がお得意と聞いたのですが・・・」
「えぇ。それが何か?」
「よろしければ私に魔法の手ほどきをしていただきたいのですが」
「リーシアさんは魔法に興味がおありなのですね」
「公爵家に連なる者として最低限身につけたいと考えているのです」
「ご立派な考えだと思います。そういうことでしたらお引き受けいたしましょう」
そう言ってセルゲンは横に置いてあった鞄から水晶を取り出した。
「まずはリーシアさんの適正を見てみましょう。この水晶に手をかざして見てください」
言われた通りに水晶に手をかざしてみる。
すると水晶は綺麗な虹色の光を放ちはじめたのだった。
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