第10話

「リーシアさん。凄いです。全ての属性に適正があるなんて」


血筋によるものかどうやらリーシアは全ての属性に適正があるらしい。


「それって凄いことなんですか?」


「普通は一属性多くても二属性とかそんなものなんだよ。僕も四属性までしか扱えないし・・・」


四属性で魔法の天才と言われるほどなのだ。


そんな中、全ての属性を扱えるリーシアは規格外の存在と言っていい。


ちなみに、父親であるイーリッヒは三属性。


母親であるリーゼロットは二属性である。


「リーシアさん。是非その才能を伸ばすべきです!」


セルゲンは熱を持ってリーシアの両手を握っていた。


「ええっと・・・。セルゲン殿落ち着いてください」


何とか冷静になってもらおうと言葉をかける。


「し・・・失礼しました。僕としたことが」


セルゲンは顔を赤らめながら手を放してくれる。


「それで、全ての属性に適正があるのはわかりましたがこれからどうすれば?」


「まずは無属性の魔力を感じるところからですね。ちょっと失礼します」


セルゲンはそう言うと応接セットを周り込んでリーシアの後ろに回り込む。


そして後ろから抱きつくような形で手を取り組ませてくる。


「ちょっと待って・・・」


普通は恥ずかしがるところだが恥ずかしさというよりは嫌悪感から待ったをかけようとする。


しかし、全属性の持ち主に手ほどきを出来ることに浮かれているセルゲンが止まることはなかった。


「しっ。静かに。今から無属性の魔力を流しますから感じ取ってください」


セルゲンのペースで進み次の瞬間変な感覚がした。


あえて言うならば体の中をかき回されているような不快な感じだ。


「何か、感じますか?」


「なんだか不快な感じです」


「魔力の道を強引に僕の魔力が通っているんです。そのまま耐えてください」


どうやらまだこの苦行は続くようだ。


リーシアの額から冷や汗が流れる。


気づけば全身も汗でぐっしょりだ。


そのまま耐えていると不快な感じがしなくなる。


「ふぅ。一度ここで休憩しましょう。いきなり負荷をかけすぎるのもあまりよくないですから」


そういってセルゲンは手を放し離れていく。


普通に考えれば突然抱きつかれ体の中を弄られた形だ。


怒るべき場面なのか悶々としていると異変を感じ取ったのか頼れる執事セバスチャンが部屋に入ってくる。


「何事ですかな?」


「セバスチャン。実は・・・」


先ほどまでのことをセバスチャンに説明すると頷いている。


「なるほど。なるほど。主のお客様に口を出せる立場ではないのですがよろしいですかな?」


そういうセバスチャンは何か凄いオーラを発しているように見えた。

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