第7話 大団円!

 俺は叫んだ心持ちのままゲインさんの家へと急ぐ。それこそゲインさんを急かして。


 だがそんな俺たちの目の前に金ピカ鎧を身に纏った騎士が立ちふさがった。


「赤鎚のマルオといったか…… 貴様は国王陛下のご好意を踏みにじった。よって、陛下の暗黒騎士たるこの私の手によって葬られる事になる……」


 いや、暗黒って…… 金ピカですよね? えっと国王直属の暗殺者ってみんなこんななのか?


 俺の疑問に答えてくれたのはお義父ゲインさんだった。


「近衛騎士団長、レイメール様…… お止めください。いくらあなた様でも赤鎚のマルオには敵いません!!」


 キッパリハッキリとお義父ゲインさんがそう言うと金ピカ騎士団長は大声で笑いだした。


「クワーハッハッハッハーッ!! 商人風情がいいよるわ!! この王国一番の剣の巧者こうしゃたる私が冒険者風情に敗けるだと? バカも休み休み言え!!」


 いや、俺まだ冒険者にもなってないんだけど……


 ここで俺ははたと気づいた。ヤベぇ…… 俺は魔物は躊躇なくピコピコハンマーで殴れるけど、人は殴ったことがない!? 魔物に対してと同じように思いっきり振ると絶対にこの人をヤッてしまう…… 


 ここはアレだ、もしも攻撃されたなら優しく子供に当てる感じで振ってみよう。


 そう思った時には金ピカ騎士団長がいつの間にか剣を抜き、俺の頭頂めがけて振っていた。

 

 アレ? 俺死んだ?


 そう思って来る衝撃に目を瞑って待っていたが、キーンッ! バキッ! カランッ! と音がしたので恐る恐る目を開けると、折れた剣を手にして呆然となっている金ピカ騎士団長。


「バッ、バカなっ!! 国宝剣【グレンダイザール】が折れる筈がっ!?」


 その隙に俺は優しくピコピコハンマーを金ピカ騎士団長のお腹に当てた。


 ピコッという音の後に、金ピカ騎士団長の金ピカ鎧の背中部分がボコンッという音を立てて爆ぜた。


「ウォイッ! これでもこの威力かっ!?」


 思わず俺も叫んでしまったが…… お義父ゲインさんが冷静に金ピカ騎士団長の脈をとり、


「赤鎚のマルオよ。手加減してくれたのだな。レイメール様は大丈夫なようだ。気を失ってはいるがな…… この国一番の剣士であるレイメール様を倒した赤鎚のマルオを襲う者はもう居ないだろう。さあ、後は衛兵に任せて家に向かおう」


 そう言われ俺は未来の妻どストライクに会いにお義父さんを抱えて走り出す。


 そして、無事にお義父さんの商店兼住宅にたどり着いた。


「おーい、帰ったぞ!」


 お義父さんがそう言うと奥から未来の妻どストライクが出てきて


「お父さん、お帰りなさい。スタンピードは大丈夫だったの? 王都は何故か発生してから三十分で警戒解除になったけれども…… アラ、そちらの方はどなた?」 


 そう尋ねられたので、お義父さんが答える前に俺は言う。


「初めまして! 赤鎚のマルオと申します。突然で申し訳ないのですが、俺と結婚を前提に、いやお付合いをすっ飛ばして結婚して下さい!! 俺が全力で生涯をかけて貴女を護ります!! どうかよろしくお願いします!!」


 その時だった。俺と未来の妻どストライクを繋ぐ赤い糸が現れたのだ。


「おお!! 運命の赤い糸!! 二人は神により定められし配偶者なのだなっ!?」


 お義父さんがそれを見てそう叫んだ。そして、俺の未来の妻、いや、妻も言う。


「あの、あの、私はこんな体型ですがよろしいのですか…… 私はゲインの娘でファディテと申します…… こんな私でよろしいのでしたら不束者ですがよろしくお願い致します」


 恥じらいながらも俺の目を見てハッキリとそう言ってくれた妻を俺は優しく抱きしめて、


「俺の方こそ、右も左も分からないけどどうか末永くよろしくお願いします!!」


 そう思いを告げたのだった。


 


 その後、赤鎚のマルオはピコピコハンマーと丸ヘルメットの装備でピエン王国周辺の魔物を狩り倒し、遂には邪神から邪魔者として直接命を狙われるがそれさえもピコッという音と共に瞬殺した。


 そして、妻であるファディテとの間に八人の子をもうけ、ファディテと共に百二十二歳でその生涯を閉じたとピエン王国史に残されている……

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【短編】手には鎚(ピコピコハンマー)! 頭には兜(丸ヘルメット)! 最強装備だと本人は知らない…… しょうわな人 @Chou03

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