第23話 皇帝

 サファイヤとレイナを手にかけて、戦艦ランホーが沈黙。

 わたしは近くの軍用テントで一夜を過ごした。

 十界じゅっかいめいが取り戻した土地にテントを張ったのだ。

 ここからは持久戦になる。

 食糧の手配や弾薬、燃料が必要になってくる。

 公海から支援団体がくる、とは聞いている。

 その前に片をつける。

 わたしは再び戦場のど真ん中を飛翔する。

 スカート・オートマタが展開され、敵軍に襲いかかる。

 それと同時に、敵兵の中から翠色の髪が見える。

 エメラルドだ。

 内部から切り崩していっているのが見える。

 彼女もまたスカート・オートマタを展開させて、敵軍を混乱させている。

 この勢いにのり、皇帝を討つ。

 わたしは戦場に出来た穴を通り、一気に皇帝のもとにたどりつく。


「覚悟なさい。アライ皇帝」

「わしを撃ちにきたか。それも良かろう」

「……どういう意味?」

「この戦争が終わっても、人は争い続ける。人間は進化せねばなるまい」

「進化?」

「そうじゃ。心のありようを変えねば、人は滅ぶ」

「何を世迷い言を。人は平和を求めている。でなければ、わたしたちは滅んでいた」

「そうじゃ。人々に衝撃を与え、平和を取り戻すのじゃ」

「なにを……」

「討て、討つんじゃ。己の信じる道のために」

 この皇帝は何を言っているんだ。

 いや相手の言葉に呑まれてはいけない。

 これも、こちらを動揺させる作戦なのだ。

「さようなら。アライ皇帝」

 手に提げた対物ライフルを構える。


 ――これで本当に平和になれるんだね?


 トリガーを引き絞る。


 タンッ。


 乾いた銃声が皇室に響き渡る。

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