第20話 十界《じゅっかい》の命《めい》

 家族の移動が終わり、連絡がつくころ。

 わたしはサファイヤのいる情報司令室でお茶をしていた。

 いるのはレイナ、サファイヤ、エメラルドの三人とわたし。

「本当にいいのか? ルビー」

「ええ。もうこの国を救うには地下組織〝十界じゅっかいめい〟が必要不可欠。これ以外に平和への道はない」

 わたしは嘆息混じりに応じると、煮出した茶をすする。

 苦い。

「これから苦労を味わうことになるよ?」

「本当にそんな地下組織があるのかな?」

 サファイヤが怪訝な顔を浮かべる中、レイナは疑心暗鬼に思っているらしい。

「大丈夫よ。わたしがリーダーなんだから」

 苦笑を浮かべるわたし。

 驚いた様子のサファイヤとレイナ。

 そりゃそうだ。

 教えていないもの。

「さて、本艦の操作をジャックするわよ」

 わたしの合図とともに、艦内が慌ただしくなる。

 司令塔のここを占拠し、艦内の自動警備ロボットを起動させる。

「あんまり手荒くしたくないわ。全員降りなさい」

 わたしはマイクを手に、艦内への放送を始める。

「これより、我々〝十界じゅっかいめい〟が戦争根絶のために戦います。理解ある者だけが残りなさい!」

 呼びかける声にうろたえる者も少なくない。

 こんな戦争に嫌気がさしている人も多い。

 でもそれでも変えなくちゃ。

 そうしなければ平和への道はない。

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