第18話 勲章授与
「八字勲章だ。おめでとう」
上官が敬礼をし、わたしの表彰式を行う。
あの少年を殺したのはわたし。
それなのに表彰されている。
理解しがたい。
人殺しを褒め称えるなど、普通の神経ではないだろう。
わたしはほとんど、心を殺して上官の言葉を受け取る。
そうでもしないと、心が壊れてしまいそうだ。
わたしはこんなにも非情な人間だったのだろうか。
苦い顔を浮かべていると、サファイヤが缶ジュースを持ってくる。
「ルビー。無理はしないでね」
「疲れているの? 少し休もうか?」
レイナも続いて訊ねてくる。
「うん。大丈夫」
「はい。おめでとう」
サファイヤが缶ジュースを差し出してくる。
「これが勲章のお祝い?」
「不満?」
「もっとお肉とか、あるでしょ?」
クスクスと笑うサファイヤたち。
この笑顔をいつまで見ていられるのだろう。
少年の遺体を思い出し、こみ上げてくる酸を押しとどめる。
気持ち悪くなった喉もとを、缶ジュースで飲み下す。
桃のジュースだった。
わたしには似つかわしくない味だ。
勲章なんて受け取っても、命には替えられない。
もっと大事な、何かを失った気がする。
わたしは、どうすれば良かったのだろうか。
もう戦いたくない。
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