第16話 ホーリングエンジェル

「作戦名、オペレーション・ホーリングエンジェル。墜ちた天使か」

 レイナは嘆息混じりのため息を吐く。

 戦争にいい加減疲れてきた。

 毎日のように移動し、敵軍を討ち、いつ攻撃されるか分からない中、神経のすり減らない奴などいない。

 上層部もそれが分かっているのか、考えさせる時間を与えてはくれない。

 しかも、軍人になれば家族は都市への移居が可能であり、さらには保証金も出る。軍の給料もかなり高額だ。月に百万ほど稼ぐ軍人もいる。

 わたしだって、弟の暮らしをよくしたい。家族を守りたい。

「天使、誰ですかね?」

 苦笑を漏らし、作戦概要を今一度確認する。

 どうみてもむちゃな計画だ。

 わたしたち、戦姫を運用することを前提に考えられた作戦だ。

 戦姫はオリジナルの対戦術戦闘衣装バトル・ドレスを使用できる特別な力を持つ者である。

 その活躍は戦線の場でなくとも、自然災害や、肉体労働といった場でも活躍している。

 が、戦争が始まってから戦線の場を主だっている。

 わたしたちは道具じゃないのに。

 それでも給料や手当のよい軍人を辞められなかった。

 それに戦わなくちゃ家族を守ることができないと考えたからだ。

 

 でも今は違う。

「サファイヤ、例の作戦は?」

「いけます。地下組織IERに働きかけています」

 わたしはこの戦争を止めるために動きだしていた――。

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