第13話 帰国
『ルビー、レイナ、作戦終了だ』
暗号パルスを解析すると、そんな命令が下った。
「了解」
わたしはそう告げると、宿舎の荷物を片付ける。
もともとスパイだったわたしたちには荷物は少ない。手提げ鞄一つに収まる程度だ。
その鞄から零れ落ちる指輪。
わたしは慌ててその指輪を鞄にしまう。
「いい?」
「はい」
レイナの呼びかけに凜とした態度で応じると、宿舎を後にする。
「よう。赤の嬢ちゃん」
パン屋のおじさんが呼びかけてくる。
「なんだ? お出掛けか?」
「そんなところです」
無難に答えていた方がいいだろう。
下手に無視するよりはよほど効率的だ。
「パン、お土産にしてくれ。今日はタダだ」
そういってフランスパンを渡してくる。
「いただけません」
これでは目立ってしまう。
「いいの。いいの。毎日お世話になっていたし」
「それなら……」
わたしは諦めて、そのパンを受け取る。
「じゃあ、急いでいるので」
そう言って別れを告げる。
列車に乗り込むと、昨日のひったくりの少年を見かける。
「あ。あのときの姉ちゃん」
「偶然ですね」
「おかげで、これから仕事なんだ」
「良かったね」
「そう! これで異国民の奴らを倒せるんだぜ?」
乾いた喉を潤すようにごくりと生唾を呑み込む。
「どんな、仕事なの?」
「疑似
意気揚々と話してくれる少年。
でも、わたしたちは……。
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