第10話 食事

『スピアノートレス作戦準備開始しました』

 無線機から流れてくる言葉にわたしたちは耳を澄ませる。

『これからは我々の時代だ。宗教も役立つな』

 半笑いで漏れる声。

「大変ですわ。本部に知らせねば」

 わたしは焦って文章に書き起こす。

「そう焦らないで。私は少し落ち着くべきだと思うな」

「レイナ、そうは言うけど」

 焦っていた。

 それは間違いない。

 でも、作戦を知らせないわけにはいかない。

 本部を、国を守らねばならない。

 コンコンとノックの音が鳴る。

 わたしとレイナは警戒を強める。

 通信機の音を絞り、レイナがドアの近くに駆け寄る。

 手に銃を持って。

「誰……?」

 誰何すいかの声を上げると、ドア越しに声が聞こえてくる。

「リーナです。お二人とも朝から食事していませんよね?」

 リーナ。

 この宿舎の一人娘だと聞いている。

「すまない。ちょっと食欲がなくてね」

「そうですか。パンとシチューを持ってきました。食べませんか?」

 レイナがそう告げると、リーナは残念そうに言う。

「……分かった」

「レイナ!」

「いいよね? 食事くらい」

「それは……」

 敵国の間者である可能性も捨てきれないというのに。

「リーナ、いいよ」

 レイナはそう言い、リーナを迎え入れる。

「下手に拒絶するのもおかしいよね?」

「それは……。そうだけど……」

 正論を言われてはわたしは受け入れるしかない。

 シチューとパンに毒が入っていないことを検査機で調べて、食事をした。

 この国にもおいしいものがあるらしい。

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