第9話 リーリリア

 リーリリアについてから翌日。

 わたしは潜入調査をするために、周囲に目線を巡らせる。

「クリスマスまでにこの戦いが終わればいいのにな」

「故郷に帰ってパーティをしたいよ」

「しょうがないだろ。討たなければ討たれる」

「殺されるよりは殺す方がマシだものな……」

 敵兵といえど、戦いたい人ばかりではないのだろう。

 それは分かっているつもりだった。

 わたしはいつの間にか敵を敵としてでしか見ないようになっていた。

 敵にも心があり、感情があるのだ。

 でも、

 私も戦いたくて戦っているわけではないのだがな。

「くそー。戦姫せんきさえいなければ……!」

 わたしたち戦姫が戦場では活躍する。

 その力を持って帝国軍を攻撃している。

 それは純然たる事実である。

 先にしかけたのはゼルマンだ。

 わたしたちの国を汚し、ファンタシアンを見下し、父と母を殺した。

 だからわたしは戦う。

 両親を守れなかった自分が憎い。

 力さえあれば――。

「最悪ね。私、ここ嫌いよ」

 隣を歩くレイナがそう呟く。

「そうね。わたしもだわ」

 頷いてみせると、少し安心したような顔を見せるレイナ。

 山陰に行くと、わたしは小型通信機をつなぐ。

「こちらブルー1。本部」

『こちらAI。ブルー1どうぞ』

 上層部とつながると、わたしは報告をいれる。

 もう少しここにとどまることとなった。

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