第8話 潜入

『各員健闘を祈る』

 短い電文とともに下された命令。

 わたしはレイナを連れて敵国に乗り込むこととなった。

 IDパスは偽造して、敵国『スカイベア』に向かうこととなった。

 車に揺られること、半日。

 敵国前戦の街『リーリリア』につく。

「補充要員とはお前たちのことか?」

 恰幅のいい、朗らかに笑う上司が訊ねてくる。

「はい。本日より着任いたしました、ルイス=アクアと申します」

 わたしはあらかじめ決められていたIDの名を言う。

「私はメメ=リーナです」

「おう。よく来たな。今はここもだいぶ落ち着いてきている。敵兵もなかなか手が出せないようだな」

 苦笑を浮かべて軽く状況を報告する。

「失礼、俺はゲイツ=ノーラだ。よろしく」

 手を差し出すノーラ。

「はい。よろしくお願いします」

 わたしは握手をかわし、敵対心がないことを示す。

「今日は長旅で疲れただろう。あちらの宿舎に泊まるといい」

 ノーラはそう言い、テントを顎で差し示す。

「ありがとうございます」

 わたしたちは前戦に設置された軍用テントに向かう。

 こっちは女性専用らしい。

 ありがたい。

 ノーラを含め、思想の違いから争うことになったもと同族か……。

 哀れみの視線を向けて、わたしは宿舎に荷物を降ろす。

 資源を巡り、思想をたがえ、その結果闘う。

 人はなんでこんなに簡単に争うのか……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る