第7話 お祭り

 わたしとエメラルド、それにレイナは前戦都市・レーテガイに繰り出していた。

 兵士の士気を高めるために行われた小さな祭りではあるものの、ここぞとばかりに住民が露店を開き、アクセサリーや飲食店、武具まで取り扱っている。

 わたしたちはその露店を見て回り、食事を買う。

 串焼きに、綿飴、リンゴ飴、焼きそば。

 どれもこれもお祭りでしか買わないものばかりだ。

「しっかし、ルビーもよく来る気になったね?」

 レイナは不思議そうに訊ねてくる。

「まあ、いいじゃない」

 エメラルドと一緒だと思ったから。

 そうは言えなかった。

「サファイヤもこれたら良かったのに」

 エメラルドは悲しげな声を漏らす。

「まあ、任務で忙しいみたいだからね」

「そうね。わたしはエメラルドと一緒で嬉しいわ」

「そ、そう?」

 照れくさそうに視線を逸らすエメラルド。

 そんな姿が可愛いから、わたしは……。

「さ。次は金魚すくいでもしよ?」

「いいわよ」

 金魚すくいの露店までいくとポイと呼ばれる金魚をすくう道具を購入。

 このポイ、すぐに破けるのだけど。

 わたしは何度かやってみて、すぐにポイが破れる。

 でもエメラルドはその薄い膜で金魚を二匹、三匹とすくいあげていく。

「かー。嬢ちゃんには負けたよ。もうとらないでおくれ」

「大丈夫です。持ち帰る気もないので」

 エメラルドはそういうといけすに金魚を戻す。

 まあ、兵士にとって動物を飼うのはあまりオススメしない。

 いつ死ぬか分からないのだから。


 こうしてわたしはお祭りを堪能した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る