第6話 エメラルド

 今日も仕事はなし、か……。

 給与明細を見て少し落ち込む。

 今月は何かと物入りだったのだ。

 少しでも稼ぎたい。

 でも前の戦闘で兵の士気は下がっている。

 このまま闘えば、こちらに甚大なる被害が及ぶ。

 なんとか、兵たちの気持ちを高めようと、明日お祭りを開くらしい。

 簡素で急増なものだけど、楽しもうとは思う。

 それが目的なのだから。

 それにしても、誰を誘うか。

 一人で見て回ってもいいけど。

「ルビーちゃん、おはっ!」

「おはよう。エメラルド」

「ん。いい返事ね。好きよ。そういうの」

「そう?」

 なんの気なしに返す。

「そうだ。明日の祭り、どうするのかしら?」

「ん。あたしを誘っているの?」

 歩く足を止めて、不思議そうに首を傾げるエメラルド=ノウ

「ええ。そうよ」

「じゃあ、行くの」

「そう。良かったわ」

 了承を得た。

 少し嬉しくなり、小さくガッツポーズをとるわたし。

 明日のために気合いを入れよう。

 鼻歌交じりに廊下を歩き、自室へ向かう。

 部屋に入ると無機質ながらんどうな部屋を見渡す。

 衣服くらいしかない。それも昨日、レイナと一緒に買った服が。

 ちょうどいい。

 これを着ていこう。

 さて、あとはメイクだけど……。

 エメラルドも可愛くするのかな。

 わたしだけにして欲しいな。


 嫉妬が渦巻くわたしの心。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る