第5話 試着

 作戦が失敗に終わり、撤退を余儀なくされる我が艦隊。

 戦場は日に日に前戦を押し上げていたはずなのに。

 あちらの自爆作戦にまんまと引っかかってしまった。

「さて。サファイヤ、わたしはどうすればいい?」

「うーん。買い物でも行ってみたら?」

「え……」

「いいじゃない。ルビー。お呼ばれしようよ」

 呑気な声を上げるレイナ。

「私たち、休暇がある方が珍しいんだから」

「それは、そうだけど……」

 わたしは渋面を浮かべて、レイナに抱きつかれる。

 反射神経はいいのでかわすこともできただろうに。

 サファイヤは何やらキーボードで打鍵している。

 忙しいのかな?

「ん? ああ。ボクのことは気にしないで行ってくるといいよ」

「そうだよ。いこ。ルビー」

「うん。分かった」

 わたしは戦艦の中にあるショッピングセンターに向かう。

 最新の衣服や食事を摂りながら久しぶりに味わう日常。

 洋服店に訪れる。

 レイナが持ってきた衣服は可愛すぎる。

「こんなのわたしには似合わないわ」

「そんなことないって。試着しよ?」

「そう言っても……」

「いいから、いいから」

 そう言って試着室に押し込まれるわたし。

 着替えて鏡を見ると、うっとりする。

 自分の姿というよりも、衣服に、だ。

「やっぱり似合うじゃない!」

 レイナが嬉しそうにしているので、これはこれで良かったのかな。

 わたしはそう思うことにした。

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