第48話 邪神笹山、追放したことを忘れてしまう

「笹山……っ! あんた最低よ! 女の子を犬にするなんて……っ!」

「笹山くん。人にはやっていいことと悪いことがあるんだよ? 今の笹山くんは本当に【鬼畜】になってる」 

「さ、笹山くん……き、キモい。クソ、クズ、死ね」


 桜庭を【雌犬化】した笹山を、亜美、委員長、黒崎が非難する。


「わんわんわんっ!(お前らをぶっ殺すっ!)」


 完全に「堕ちた」桜庭は、俺たちに向かって吠えまくる。


「俺が【最低】だと? 最低なのはてめえらだっ! 俺を裏切って、しかも俺の経験値を奪いやがって! 殺しても殺し足りねえ」

「裏切るも何も……笹山が俺を【追放】したんだろ?」

「俺は追放してねえ。お前が勝手に出て行ったんだっ!」


 予想の斜め上すぎる。


 俺を追放したこと、忘れている……?


 モンスター化した影響なのか、それとも単に都合の悪い事実を捻じ曲げているだけか。


「……ふざけんじゃないわよっ! あたしと優斗を追放したのは、あんたと桜庭でしょ! なんであんたが【被害者】なのよっ!」


 ついに亜美がブチキレてしまう。


 その気持ちは痛いほどわかる。


 俺も同じ気持ちだ。


「笹山くんがみんなの経験値を独占していたから、返してもらっただけ。人のせいにしちゃ、めっ、だよ!」


 委員長も怒ってるみたいだ。


 笹山が【ハーレム】を作って、経験値も独り占めして、まるで王のように振る舞っていた。


 一番強い【剣聖】のスキルを持っていながら、自分のことしか考えていなかった笹山。


 そんな笹山が嫌で、委員長も黒崎も逃げてきたのだが……


 ひとつ、俺には気になることがあった。


「……ところで笹山。他の女子たちはどうしたんだ? まさか……」


 俺の問いかけに、笹山は薄笑いを浮かべた。


「ははは。俺が殺した。裏切り者どもを【処刑】しただけだ。これからお前らも処刑する」

「お、お前……っ!」


 俺は拳を握り締める。


「同じクラスメイトだぞ。許せない……」


 こいつは生かしちゃいけない奴だ。


 放っておけば、どんどん犠牲者が増えていく。


 この迷宮で、潰しておかないとヤバい。


「このモンスターは、主人を追放し、主人の仲間を殺したということだな?」


 コレットの目が、燃えるように赤く光る。


「あははっ! だったら何だって言うんだ?」

「主人の敵は、我の敵なり。我が叩き潰してやろう」


 人型の姿だったコレットは、ブラックドラゴンの姿に変化する。


「な、なんだ……っ! 人がドラゴンに?!」

「わんわんわん……!(ドラゴン怖い……)」


 笹山と桜庭がビビっている。


 (意外ととビビりな奴なんだな……)


「虫ケラよ。これから蹂躙してやるわ」



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