第47話 笹山と遭遇する「誰じゃ? この弱そうなモンスターは?」

「だんだん出口に近づいてきたな……」


 俺たちはサクサク迷宮を攻略していた。


 出現モンスターはだんだん強くなっている。


「みのおおおおおおおっ!」


 Sランクモンスター、ミノタウロスが襲ってくるが、


「優斗っ! あたしに任せてっ!」


 亜美がミノタウロスの前に出て、


 ——灼熱のブレスっ!


 ぼおおおおおおおおおおっ!


「みのおおおおおおおっ?!」


 ミノタウロスに向かって火を吹く。


 ミノタウロスは、一瞬で灰と化した……


「すごいな。亜美」

「へへっ! もっと褒めてもいいんだよ?」

「うん。亜美はすごいすごい」

「なんかテキトーな気がするんですけどー?」

「いや、そんなことないよ。亜美はすごい」


 こうやって冗談を飛ばせる余裕も出てきた。


 案外、今回の攻略は簡単に終わるかも……


 と、俺が油断した時だった。


「おいおい。陰キャ野郎。ハーレム作ってイキってんのか?」


 聞いたことのある不快な声が。


 振り返ると、そこにいたのは——


「さ、笹山……っ!」


 しかし、笹山は【かつての笹山】ではなかった。


 禍々しい赤い目、背中に蝙蝠のような翼。


 手の爪は鋭く光る。


「さ、笹山くんなの……?」


 委員長も驚いている。


「誰じゃ? この弱そうなモンスターは?」


 コレットが俺に聞くが、


「……笹山はモンスターじゃないよ。同じクラスメイトだ」

「【くらすめいと】って、何じゃ?」


 コレットは首を傾げる。


「うーんと、クラスメイトって言うのは……」


 たしかに「クラスメイトって何か?」と改めて聞かれると、なんで答えていいかわからない。


 たまたま同じ学校で、たまたま同じクラスになっただけの他人……って感じか?


 要するに、どうでもいい奴ってことだ。


「湊川っ! 俺を無視するんじゃねえっ! ていうか俺が【弱い】とはどういうことだっ!」

「そのままの意味じゃが……? 主人よ。このモンスターは言葉が不自由なのか?」

「てめえ……ぶっ殺すっ!」


 笹山が目が赤く光る。


「わんわんっ! わんわんっ!」


 笹山の影から、犬の鳴き声が……


「「「「え……っ?!」」」」


 俺たちは絶句した。


 桜庭が首輪をつけて、


 しかも、裸——


 その姿は、まさに【犬】だ。


「わんわんっ!(お前らを殺す)」

「はははっ! 湊川、見たか? 俺の雌犬を」

「…………」

「すごいだろう? すげえかわいいギャルの桜庭が、俺のペットになったんだっ!」


 なぜか俺にドヤる笹山。


「…………最低だな。お前」

「なるほど、なるほど。湊川、俺に嫉妬しているな? 陰キャのお前は一生、ギャルにしゃぶってもらうことなんてないからなっ! あははははっ!」


 モンスター化(?)して、ついに狂ったのか?


「…………笹山、いろいろ大丈夫か?」



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