第32話 笹山、邪神化する 追放者視点

「ササヤマくんは、ミナトガワユウトに勝てる力がほしい?」

「ほしいっ!」  

「そっか〜〜よしよしっ!」


 女神アテナは、ニッコリと笑う。


 笹山の頭を、優しく撫でた。


「やめろ……」

「キミは邪悪な心を持っている。本当に【邪神】にふさわしい子だよ!」

「じゃ、邪神……?」


 邪神という不穏な言葉に、


 笹山は驚きを隠せなかった。


 (邪神って、いったい何だよ……?)


 女神の笑顔がまた不気味であった。


「あはっ。怖がらなくていいよ。ササヤマくんはとっても強くなれるから。世界最強になれるよ!」

「俺が、世界、最強……」


 自分が世界で、一番強くなれる——


 「最強」という言葉は、笹山の心に響く。


「邪神になって、ミナトガワユウトに復讐しよっ!」

「そうだ……湊川が悪い。アイツが俺から、全てを奪ったんだ……」


 優斗への憎しみを煽るアテナ。


 笹山の中の憎しみは、どんどん膨らんで行く。


「俺に、力をくれ」

「わかった。ササヤマクンを邪神にしてあげる!」


 笹山の足元に、魔法陣が現れる。


 赤い邪悪な光に、笹山は包まれて……


「うわああああああああっ!」


 笹山の身体は形を変えていく。


 人ならざる、異形の姿に。


 笹山は意識を失った……


「ははは……っ! せいぜい【噛ませ犬】として頑張ってねー!」


 女神は薄笑いを浮かべた。



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