第31話 笹山、完全に狂う 追放者視点

「ぐ……っ! あんた、何して……」


 桜井は、腹を押さえながら倒れ込む。


「ははは……っ! どうせ湊川に取られるなら、みんな殺しちまったほうがいいっ!」


 笹山の目には、光がない。


 壊れてしまった。


 完全に【あっち側】へ行ってしまった。


「みんな……逃げて……」


 桜井は口から血を流しながら、


 他の女子たちに呼びかける。


【きゃあああああああああああっ!】


 女子たちは悲鳴を上げながら、


 笹山から逃げ出すが、


「殺す、殺す、殺すっ!」


 バスターソードで、次々と女子たちを襲う。


「ひゃはああああああっ!」


【助けてえええええっ!】

【死にたくない!】

【ぎゃああああっ!】


 笹山は完全に狂った。


 女子たちを斬りまくっていく。


「はあはあ……みんな死んだか……」


 気がつけば、辺りは血の海と化していた。


 女子たちの死体が、ゴロゴロ転がって。


「……笹山。あんた、もうおしまいだ……」


 桜井が、声を絞り出す。


「うるせえよ。ばーか」


 ザク。


 笹山はバスターソードを桜井に刺す。


「がは……っ!」


 桜井は死んだ。


「この俺を裏切ろうとするからだ……」


 笹山は桜井の死体を蹴る。


「あはっ! 最低だねっ!」


 (この声、どこかで聞いたことが……?)


 笹山の前に、女神アテナが現る。


「この俺が、最低?」

「うん。最低だよー! クラスメイトをみんな殺しちゃうなんて」

「うぜえよ。俺に何の用だ?」

「いいこと教えてあげようと思って」


 ニコニコ笑うアテナ。


「実は……笹山くんのレベルが下がったのは、湊川くんのせいなんだよっ!」

「嘘だろ。あの雑魚がそんなことできるわけ——」


 笹山の脳内に、映像が流れ込んでくる。


 委員長の【経験値分配】で、優斗がレベルアップして、


 一方、レベルダウンしたことを。


「あはっ! わかったかな?」

「湊川が、俺のすべてを奪ったのか……」

「そうだよー」

「…………湊川、殺す」


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