第20話 俺は経験値分配で一気にレベルアップする。一方、笹山はレベルダウンする「笹山の経験値が分配されたんだよ。笹山が独占していた経験値が、俺たちに与えられたんだ」

「ふう……やっといなくなったか……」


 俺が合流を拒否した後、


 桜庭と男子たちは、しばらく俺たちの跡に着いてきた。


 だが、俺たちがフロアボスのゴーレムと戦うと聞くと、


 いつの間にか、どこかへ消えていた。


 (まあ……逃げたんだな……)


 俺たちはボス部屋の前へ来た。


 大きな赤い扉の向こうに、ボスがいる。


「優斗、ゴーレムどうやって倒そう……?」


 亜美が不安げな表情をする。


「湊川くん。私も少し怖いかな……」


 委員長も不安なようだ。


 まあ仕方ない。


 二人とも、初めてのボス戦だからな。


「まず、現状の戦力を確認しよう。……とりあえず、委員長のスキルは何かな?」

「あたしのスキルは、【経験値分配】っていうの……」

「「えっ?!」」


 俺と亜美は、めっちゃくちゃ驚いてしまう。


 経験値分配——俺たちが求めていたスキルを、委員長が持っていたからだ。


「本当にごめんね。こんな弱いスキルで……」


 委員長は申し訳なさそうな顔をして。


 (そうか。委員長は知らないのか……)


 委員長は自分のスキルが、どれだけすごいか知らない。


 笹山たちと一緒にいた時は、スキルを使っていなかったんだろう。

 

 笹山のことだから、直接戦闘の役に立たない【経験値分配】を「ゴミスキル」と言って、使わせなかったに違いない。


「委員長のスキルは、実はめっちゃくちゃ強いスキルなんだ」

「えっ?! そうなの?」


 ぴょこんっと、委員長が飛び跳ねた。


「経験値分配は、仲間に経験値を分け与えるスキルなんだ。仲間全員が強くなることができる」

「そ、そんな力があったんだ……」

「さらに、戦闘で得られる経験値を1.5倍にできる」

「つまり、あたしがいれば、湊川くんは1.5倍強くなれるってこと?」

「そうだよ——」


 突然、委員長が泣き出す。


「ど、どうした……? 何か酷いこと言っちゃった?」

「ううん。違うの。湊川くんの役に立てるのがすっごく嬉しくて。あたし、足手まといになるんじゃないかって不安だったの……」

「そうだったんだ。委員長がいてくれると、すげえ助かるよ」

「あ、あたしが湊川くんの助けにっ?! ううう……っ! 泣いちゃいそう!」


 (もうすでに泣いてるけど……)


 ガチ泣きする委員長に突っ込めるわけもなく。


「あはは……よかったね! 委員長がすごいスキルを持っていて! さっそく【経験値分配】使ってみてよ!」


 ばっと、亜美が割って入ってくる。


「うん。ありがと。……経験値分配、アクティベート!」


【レベルアップしました!】

【レベルアップしました!】

【レベルアップしました!】


 経験値分配の効果で、委員長のレベルが上がった。


 委員長のレベルが10→20に。


 しかし、それでだけでなく、


「ねえ、優斗。あたしたちのレベルも上がったみたいだけど……?」

「マジか」


 俺のレベルが21→41に、


 亜美のレベルも18→38に上がる。


「この状況なら、俺と亜美の経験値を、委員長に分け与えるはずなのに……?」


 普通なら、レベルの高い者の経験値が、レベルの低い者へ行くはずだが……


 (あっ! そういうことか!)


「優斗。何かわかったの?」

「笹山の経験値が分配されたんだよ。笹山が独占していた経験値が、俺たちに与えられたんだ」

「なるほどねー。そうなると、笹山はレベル下がちゃったってこと?」

「そういうことになるな」


 笹山の経験値は俺たちに分配された。


 だから、俺たちがレベルアップした分、笹山はレベルダウンする。


 笹山のグループは、たぶん笹山一人だけが戦力だから、


 笹山のレベルが下がればヤバくなる……のか?

 

 (まあ俺は知らんけど)


「こんなにレベルが上がれば、ゴーレムに勝てるよ」

「やったぁ! あたし、湊川くんの役に立てたっ!」

 


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