第15話 委員長、桜庭を叱る「桜庭さんは、湊川くんと会ったら【土下座】しなさい。できなかったら、桜庭さんは仲間になれません」 有栖川視点

 有栖川たちは、笹山のグループから離脱した。


 優斗たちと合流し、一緒に迷宮を脱出するつもりで。


「有栖川さん、湊川を探すなんて行ってたけど、アイツがどこにいるかわかるの?」


 桜庭が不安そうな表情で尋ねる。


「大丈夫……黒崎さん、お願いっ!」

「うん。……探索、アクティベートっ!」


 黒崎のスキルは、【シーカー】だ。


 その能力は、迷宮内の魔物や仲間の位置を見通すことができる。


「……見つけた。湊川くんたちは、次の階層にいる」


 目を閉じながら、黒崎が言う。


「近くにいるみたいでよかった……!」


 有栖川はホッと、胸を撫でおろす。


「さっさと行きましょう。早くアイツと合流して、こんなところ出て行きたいから」


 (湊川くんを、アイツ呼ばわりなのね……)


 桜庭は先を急ごうとするが、


「待って。あたし、桜庭さんに【お話】があるの」


 グッと、有栖川は桜庭の腕を強く掴む。


「な、なに……? 話って?」


 キッと自分を睨みつける有栖川に、少しビビってしまう桜庭。


「悪い子は、ちゃんと叱らないといけないと思うの」

「悪い子って、あたしのこと……?」

「うん。桜庭さんはとっても悪い子だよ。自分がしてきたこと、わかってる?」


 まるで小さな子どもを諭すように、


 桜庭に接する有栖川。


 周りのクラスメイトたちは、桜庭に冷たい視線を向けていた。


「あ、あたしが何をしたって言うの?」

「はあ〜〜っ。湊川くんを、追放したでしょ?」

「えっ? アレは笹山が強引に進めただけで、あたしは何もしてないもん!」


 (ダメだ、この子。全然わかってない……)


【お前も追放しただろ!】

【湊川をゴミ扱いしてたっ!】

【みんなのことバカにしてたくせにーっ!】


 クラスメイトたちから、非難の声が挙がる。


「みんな酷いよっ! あたしのせいじゃない! 悪いのは全部、笹山よっ!」

「桜庭さん、めっ、だよ! 自分のやったこと、ちゃんと認めなさいっ!」

「違うっ! あたしは悪くないからっ!」


 (あくまで責任逃れするつもりね……やれやれ)


 泣きながら逆ギレする桜庭に、呆れる有栖川。


「湊川くんのことを【ゴミ】だって言ったでしょ? この状況で追放したら湊川くんが死ぬかもしれないってことも、ちゃんとわかってたはずだよね?」

「だ・か・ら、それは笹山が——」

「桜庭さんは、湊川くんと合流したら、湊川くんにきちんと謝ること」

「あたしがあんなヤツに謝るなんて……」


 (本音が出たわね……)


 桜庭は、まだ心の底で優斗を見下している。


 それがわかった有栖川は。


「桜庭さんは、湊川くんと会ったら【土下座】しなさい。できなかったら、桜庭さんは仲間になれません」

「ど、土下座……? そんなの酷いっ!」

「桜庭さんのほうが、酷いこといっぱいしたよ? さあ、みんなの前でお約束しなさいっ!」

「……イヤよ。土下座なんて無理っ!」


 桜庭は首を横に振る。


「仕方ないわね。桜庭さんは仲間になれません——」

「わ、わかったわよ! 土下座すりゃいいんでしょ! やるわよ!」

「いい子です。心込めて湊川くんに謝ってくださいね」

「ぐぬぬぬ……っ!」


 

 ——しかしこの後、桜庭は自ら助かるチャンスを捨てることになるのだった。



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