第12話 ドラゴンの肉を食って、スキルを手に入れる「わあっ! じゅうじゅう焼けて美味しそうだね〜〜」

「ドラゴンを食べるって……本当に?」

「ああ。結構うまいし、スキルも手に入る」


 俺のスキルは【鑑定】で、亜美は【回復術師】だ。


 攻撃スキルがない。


 このままじゃ、先がキツくなる。


 もっと耐久力のあるモンスターが、たくさん出てくるからだ。


「それより……優斗、その、見えてる……」

「……? 見えてるって?」

「〜〜っ! 女の子に言わせる気なのっ?」


 亜美は顔を真っ赤にして、


 俺の股間を指さして——


 タオルがないことに気づくが、


「あ……っ! すまんな」

「すまんな、じゃないでしょおおおおおおっ! バカああああああっ!」


 ★


 股間事件(?)の後、


 俺はドラゴンの肉を捌いていた。


「身体を洗ってから鱗を取って……って、ブロンズナイフじゃ無理か」


 ベビードラゴンという雑魚ドラゴンとはいえ、


 硬い鱗と分厚い皮膚がある。


 ナイフで捌くのはやっぱり無理だ。


 ——クラフト、アクティベート。


 解体用の鉈を作り出す。


 鱗を除去した後、血を抜いて、内臓をくり抜き、腿や胸の肉を切り取る。


「けっこう大変だな」

「ていうか、優斗すごいね……ドラゴンの解体なんてどこで覚えたの?」

「前回の攻略で、料理スキルのある奴に教えてもらったんだ」


 前回の攻略では、クラスメイトみんなで協力していた。


 お互いに持っているスキルを使って、助け合いながら迷宮を攻略して……


 でも最後に、あのクソ女神にみんな殺されて。


「…………」

「どーしたの? 優斗? なんか顔が怖いよ……?」


 心配そうな表情で、俺を見つめる亜美。


「いや、なんでもない……」

「そっか。もし辛いことあるなら、あたしに話してね。幼馴染なんだからさ」

「ありがとな……」


 かなり疲れたが、ドラゴンの解体作業が終わり、


 捌いた肉を、焼いて食べることに。


 鱗を鉄板にして、ピンク色の新鮮な肉を乗せる。


「わあっ! じゅうじゅう焼けて美味しそうだね〜〜」

「だろ? 味もけっこう美味いからな」


 香ばしい匂いする。


 クラフトスキルで作った、焼き肉のタレをぶっかけて、


 口の中に放り込むと、


「美味い……!」


 味は、柔らかいステーキってところだ。


 口の中に、じゅわっと肉汁が広がる。


「めっちゃくちゃ美味しいいいいいいっ!」


 亜美が感動している。


 頬が緩みまくって、ちょっとはしたないが……


 喜んでくれてよかった。


「もっと食べたいっ!」

「ああ。たくさん食べてくれ。その分、強くなる」

「ふぇ?! 食べたら強くなるの?」

「そうだ。モンスターの肉を食べれば、ステータスが上がるし、スキルも手に入る」


 ステータスカードを見てみると、


 名前:湊川 優斗

 年齢:17歳

 レベル:2

 腕力:105(+10)

 器用:137(+10)

 頑丈:57(+10)

 俊敏:89(+10)

 魔力:127(+10)

 知力:48(+10)

 運:56(+10)

 スキル:鑑定(C)

 スキル:クラフト(S)

 スキル:炎のブレス

 

 ステータスに+10の補佐、


 そして新しいスキルに、炎のブレスが。


「優斗、炎のブレスっていうのが増えたね!」

「これで攻撃スキルが手に入った。モンスターと戦い易くなったよ」 


 俺も亜美も、炎のブレスを習得した。

 

 炎のブレスなら、攻撃の範囲も広い。


 雑魚モンスターは一掃できる。


「でもさ、モンスター食べるなんて発想、普通ないよね? 優斗に言われるまで気づかった」

「そうだな。鑑定スキルがないと気づかない」


 鑑定を使えば、どのモンスターが食べられるかちゃんとわかる。


 中には毒のあるモンスターもいるし。


「じゃあ、鑑定できる人がいない笹山たちは、モンスター食べたりしないよね……」

「たぶん食べないと思う」


 モンスターが食べられることに気づく、クラスメイトがいればいいが……


 そんな奴はいないはずだ。 


 ……そういえば、委員長は大丈夫かな?


「委員長が心配だな……フェンリルにやれてなけりゃいいけど」

「ねえ、優斗。委員長のことばっかり心配してない?」

「え? いやいや、そんなことないけど」

「委員長の話ばっかりしてるじゃん? なんでー?」


 ジットとした目で、俺を覗き込む亜美。


「委員長は俺の追放に反対していたからな」

「ふーん? 本当にそれだけ?」

「それだけ、だよ」

「……(あたしのことも、もっと心配しなさいよ)」


 亜美が何かをボソッと言う。


「? 何か言ったか?」

「ふーんだっ! 何でもないよー!」



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