第10話 ダンジョンの温泉に入ってたら、強くなって幼馴染といろいろある「いいよ。だってあたし、優斗のことずっと——」

 森のフロアを抜けると、今度は洞窟のフロアだった。


「少し暑いな……」


 足元の岩が少し熱を持っている。


「きゃああああっ! 熱いっ!」


 突然、亜美が俺に抱きつく。


 ぶしゅうううううううっ!


「間欠泉か」


 一定の周期で、ガスとお湯が吹き出す自然現象だ。


「待てよ。間欠泉があるってことは……?」


 そうだ。思い出した。


 このフロアにはたしか——

 

 俺は湯気の立つ、岩場を降りていくと、


「温泉だっ!」


 大きな泉に、澄んだお湯の温泉があった。


「優斗、すごいよ! これ、入れるかな?」


 亜美も笑顔で大喜びする。


「一応、鑑定してみるか」


 ——鑑定、アクティベート。


 名称:エリクサーの温泉

 効能:全ステータス+補正

 

「……入っても大丈夫そうだ。むしろステータスが上がるから、入ったほうがいい」

「うん。あたしも優斗と温泉、入りたいし……」


 亜美の顔がほんのりと赤くなる。


「優斗……あたし、あっちで脱ぐから。絶対に見ないでねっ!」

「ああ、見ないよ」

「本当にダメだよ? 見たら殺すからね……っ!」


 亜美は俺を威嚇(?)した後、急いで岩陰に行く。


「俺も服を脱ぐか……」


 ★


「気持ちいいなぁ……」


 俺はゆっくりと温泉に浸かる。


 すげえ温かくて、疲れが取れていく。


「本当に生き返るわーっ!」


 亜美も癒されているみたいだ。


 俺がクラフトで作った、タオルを巻いている。


「あ、そうだ。ステータス上がったかな?」


 ステータスカードを見てみると、


 名前:湊川 優斗

 年齢:17歳

 レベル:2

 腕力:5(+100)

 器用:7(+130)

 頑丈:7(+50)

 俊敏:9(+80)

 魔力:7(+120)

 知力:8(+40)

 運:6(+50)

 スキル:鑑定(C)

 スキル:クラフト(S)

 

「かなり上昇してるな」


 レベル2のステータスじゃない。


 たぶんレベル30くらいのステータス。


 これなら、しばらくレベル上げしなくて大丈夫だ。


「優斗っ! この温泉めっちゃくちゃすごいよっ!」


 亜美もステータスが上がったようだ。


 はしゃぎ回る亜美。


「あ……っ? きゃあああっ!」


 胸に巻いてたタオルが、はらりと落ちて。


 たわわな胸が露わに——


 俺はとっさに後ろを向いて、


「大丈夫だ! 俺は見てない……!」

「…………優斗なら、見てもいいよ?」

「えっ……?」


 (いったい何を言ってるんだ……?)


 さっきと言ってること正反対なのだが。


「見れるわけねえだろ……」

「昔は一緒によく、お風呂入ってたじゃん」

「もう子どもじゃないし」


 俺と亜美は、幼馴染。


 家が近所で、ずっと一緒に育ってきた。


 たしかに子どもの頃は、風呂に入ったこともあったけど……


「……そうじゃなくてさ、今、優斗と【こういうこと】しておかないと、もうできなくなる気がして」

「もしかして、それって……?」

「いろいろ順番おかしいけど、この先、何が起こるかわからないじゃん。迷宮を出た後だって、元の世界に帰れる保障もないし。だから、お願い……」

「いや、本当に——」


 ふにょん!


 背中に柔らかいものが当たって。


 後ろから、亜美が俺に抱きついた。


「ごめん。キモいよね? いきなり、ただの幼馴染がこんなことするなんて……」

「そんなことないけど……本当にいいのか?」

「いいよ。だってあたし、優斗のことずっと——」


 亜美が何かを言いかけたその時。


 ——ドラぁぁぁぁぁっ!


 モンスターの咆哮……!


 岩影から、ベビードラゴンが出てきた。


 黄色の鱗の、小さなドラゴンで。


 ——鑑定、アクティベート。


 名称:ベビードラゴン

 ランク:D

 スキル:炎のブレス


 低ランクのモンスターだが、


 スキルが少し厄介だな。


「優斗……」


 亜美が俺の腕を掴む。


「大丈夫だ。ドラゴンだけど弱い」

「そ、そうなの?」

「ああ。本当だ」


 ——ドラァ!


 ベビードラゴンが襲いかかってくるが、


「おらっ!」


 ——ぎゃふんっ!


 拳を一発、ベビードラゴンの顔にぶち込む。


 ベビードラゴンは宙を舞って、岩の上に落ちた。


「えっ? ワンパンで倒せたの?」


 温泉の力のおかけだ。


 (あっ! いいこと思いついたっ!)


「よし。ドラゴンを食べよう」



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