第8話 レベルアップして強くなり、ダンジョン飯を楽しむ「うん。どうでもいいよ。みんなフェンリルに食べられて、死んじゃえばいいのに!」

「おりゃああああああっ!」

「すららららららっ!」


 ザクっ!


 俺はブロンズナイフを、スライムに叩きつける!


「すらぁぁぁっ!」


 スライムは叫び、消滅。


【レベルアップしました】

 

 迷宮の声がして、俺はステータスカードを見る。


 女神からひとり一枚もらった、自分のステータスを確認できるカードだ。


「ステータス、表示」


名前:湊川 優斗

年齢:17歳

レベル:2

腕力:5(+2)

器用:7(+3)

頑丈:7(+3)

俊敏:9(+5)

魔力:7(+5)

知力:8(+5)

運:6(+1)

スキル:鑑定(C)

スキル:クラフト(S)


 俊敏が少し高いが、他は平凡な能力。


 俺のスキルは【鑑定(C)】だし、ステータスも戦闘向きがじゃないみたいだ。


 でも有難いことに、【クラフト(S)】のスキルがある。


 俺が一度目の迷宮攻略で与えられたスキルだ。


 クラフト——素材さえあれば、自分が見たことのある道具を作ることができるスキル。


 女神が消し忘れたのか知らないが、クラフトはサバイバルにかなり使える。


 しかも、スキルランクも最高の【S】のままだ。


 Sランクのクラフトは、魔力消費0で、自分の見たことない道具も作り出せる。

 

「優斗! あたしもレベルアップしたよ!」


 亜美が笑顔ではしゃいでいる。


 ——そう。俺たちの選んだ右のドアは、最弱モンスターのスライムしかいない部屋だった。


 鬱蒼とした森だ。


 レベル1の俺たちは、無理なくコツコツとレベル上げに励む。


 左のドアは……Aランクモンスター、フェンリルの群れがいる。


 フェンリルは普通ならレベル50はないと倒せないモンスターだ。


「有栖川さんたち、大丈夫かな……?」


 有栖川さん含め、笹山に着いて行ったクラスメイトが心配だ。


 今のクラスメイトに、フェンリルと戦って勝てる奴はいない。


「優斗を追放した人たちだよ? 優斗が心配することないよ」

「それもそうだな……」

「優斗、優しすぎだよ」

「そうかな?」

「うん。どうでもいいよ。みんなフェンリルに食べられて、死んじゃえばいいのに!」

「おいおい。過激だな……」

「だってこの状況で追放するなんて、あたしたちに【死ね】ってことでしょ? あたしたちを殺そうとした人たちのこと、心配できない」


 ……まあたしかに、亜美の言うとおりだ。


 しかし、笹山がやられるのは仕方ないにしても、


 有栖川さんは俺の追放に反対していた。


 それに学校でも、いじめられていた俺に親切で……


 今はもう考えても仕方ない。

 

 俺たち前に、進むしかないんだ。


「亜美、そろそろメシにするかっ!」

「でも、パンがこれだけじゃ……」


 亜美は皮袋を開けて、ため息をつく。


「安心しろ。食糧は現地調達すればいいんだ」

「えっ? 優斗、食べられるものわかるの?」

「ああ。一度目の攻略の時、いろいろダンジョンメシを試したからな」


 しかも、今回のスキルは鑑定だ。


 ダンジョンに生える植物を鑑定すれば……


「あのキノコ、食べられるぞ」  


 俺は樹に生えたキノコを指さした。


「本当に? 色けっこうヤバいよ」


 黄色と黒のまだら模様のキノコ。


 普通は毒キノコにしか見えないが……


「いや、鑑定したから大丈夫だ。ちゃんと食べられる」


 名称:ダンジョンマツタケ

 効能:極上の美味。体力と魔力を回復する。


「焼いて食べよう」

「マッチもライターもないけど……」

「ないなら、つくればいい」


 俺は落ちていた木の枝を握って、


「クラフト、アクティベート!」


 木の枝をマッチにクラフトする。


「す、すごいっ!? ただの木の枝がマッチがなっちゃった!」


 亜美が目を丸くして驚く。


「枝を集めて焚き火にしよう」


 俺と亜美は、周囲の林から枝を拾い始める。


「あっ! 優斗! これは食べられるかな?」


 亜美が嬉しそうに俺を呼ぶ。


 林に生えた、茶色いキノコを指さして。


「なんかシイタケみたいで、すっごく美味しそう!」

「そうだな……鑑定してみるか」


 名称:ダンジョンドクタケ

 効能:強い毒性。腹痛、嘔吐、頭痛、下痢、高熱


「うーん、これは毒キノコみたいだ」

「ウソっ! じゃあ、食べちゃダメだね……」


 俺には鑑定スキルがあるが、


 笹山たちのほうには、鑑定スキルを持つ奴はいない。


 前回は、鑑定スキル持ちは何人かいたが、


 今回は、俺一人しかいない。


「この毒キノコ、けっこういっぱい生えてるね」

「この先もたくさん生えてるよ」

「見た目が美味しそうだから、知らなかったら食べちゃいそうだね」

 

 有栖川さんが間違って食べなきゃいいが……


「よし! 枝も集めたし、キノコを焼くぞっ!」

「やった! すっごく楽しみっ!」



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