第7話 笹山のせいでクラスメイトが半分に「はあはあ……囮になってくれて助かった! あいつらの自己責任だ。剣聖の俺の犠牲になってくれっ!」 追放者視点

「ぎゃああああああああああああっ!」

「助けてくれええええええええええっ!」


 クラスメイトたちの悲鳴——


 毒霧で動けなくなった笹山たちに、


 凶暴なフェンリルが襲いかかる……!


「笹山っ! めっちゃくちゃヤバいよ! なんとかしないと……」


 桜庭が声を張り上げるが、


 ガクガクブルブル「…………」


 恐怖で足がすくんで、動けなくなる笹山。


「マジかよ……笹山、ダメじゃん」


 笹山が戦闘不能になっているから、


「あ、あたしがなんとかしなくちゃ……」


【ぎゃあああああああああああああっ!】

【俺の足が、く、喰われたあああっ!】

【痛いよおおおおおおおおおおんっ!】


 クラスメイトたちは、次々とフェンリルの餌食になっていき。


 ガクガクブルブル「……………」


 怯えまくって、まだ動けない笹山。


「いったいどうしたら……あ、解毒魔法を使えば!」


 桜庭は目を閉じて、


「解毒魔法——キアリル、アクティベートっ!」


 クラスメイトたちは、緑の光に包まれて。


【身体が動くぞ……っ!】

【助かった……!】

【逃げろっ!】


 フェンリルから逃げ回るクラスメイトたち。


 フェンリルと戦える、力ある者はいない。


 ただ、逃げ惑うしかなかった。


「笹山っ! 早く戦ってっ!」


 ガクガクブルブル「…………」


 麻痺はすでに解けているはずだが、


 笹山はまだ、身体が少しも動かない。


 何もできず、クラスメイトたちがフェンリルに喰われるのを見ているだけ。


「おいっ! 笹山っ! しっかりしろーっ!」


 バンっと、桜庭が笹山の背中を叩く。


「……はっ! 俺はいったい……?」


 やっと笹山の意識が戻る。


「笹山、剣を抜いて! あんたが一番いい武器を持っているんだよ!」


 笹山はバスターソードを背負っていた。


 女神からもらった中で、一番強い武器だ。


「早くっ! 笹山ぁ!」


【笹山くん、助けてっ!】

【俺たちを見捨てないでくれっ!】

【笹山ぁぁあぁぁぁあっ!】


 (このままじゃ……みんな死ぬっ!)


 笹山はバスターソードを抜いた。


「笹山……! あたしとクラスメイトを助けようっ!」

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 バスターソードを振り回しながら、


 フェンリルの群れに突っ込む笹山。


 だが、


 ——ガルルルルルルルルルルルルっ!


「ひいっ!」


 フェンリルの威嚇に対して、


 笹山はめっちゃくちゃビビってしまう……


 威勢よく振り上げた、バスターソードを下ろして、


「みんな逃げるぞっ! こっちだぁ!」


 全力で逃げ出そうとする笹山だが、


「ちょっと! あんた、あいつら見捨てる気なの?!」

「俺たちのレベルじゃ、フェンリルに勝てねえっ! ここで死にたくないっ!」

「だからって……あっ! 待ちなさいよぉ!」


 桜庭の制止を振り切って、


 笹山は逃げて行く——


【笹山ぁぁぁ! 行かないでくれえええっ!】

【まだ死にたくねえよおおおお!】

【お前のせいだろっ! 笹山ぁぁ!】


 フェンリルに捕まったクラスメイトたちから、


 笹山を罵倒する声がして。


「はあはあ……囮になってくれて助かった! あいつらの自己責任だ。剣聖の俺の犠牲になってくれっ!」


【クソッタレ! 笹山ぁ!】

【最低! クズ!】

【お前もしねえああええっ!】


 耳を塞ぎながら、逃げる笹山だった——

 

 30人いたクラスメイトは、笹山のせいで15人に。


 笹山のせいで半分を失った。


「笹山……あんたのせいだからねっ!」


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