第4話 クラスごと死の迷宮に放り込まれる。

「英勇選定……それは勇者を超える英雄、英勇を選ぶための儀式です」

「いったい、どんな儀式ですか……?」


 有栖川さんが、おそるおそる女神に尋ねる。


 さっき若林を瞬殺した女神。


 クラスメイトたちは、女神に怯えていた。


 (アレをまたやるのかよ……っ!)


「勇者の皆さんには、これから迷宮に行ってもらいます。迷宮で魔物と戦いながら、強く成長してもらいまーすっ!」

「め、迷宮……?」

「あはっ! 行ってみたらわかりますよぉ。じゃあいってらっしゃいっ!」

「ちょ……待って——」


 俺たちの足元に、


 でっかい魔法陣が……っ!


「皆さん、頑張って生き残ってねー♡」


 青い光に、俺たちは包まれて——


 ★


【……ここはどこだ?】

【暗いし、寒いよ……】

【……洞窟かな?】


 突然別の場所に転移させられて、


 戸惑うクラスメイトたち。


 だが、俺はここがどこか知っている……


 どんなヤバいところかも、な。


「ねえ、優斗。ここどこかな……?」


 亜美が不安げな表情で、俺の腕を掴んだ。


 かなり怖がってる。 


「安心しろ。この部屋は大丈夫だ。まだ魔物は出てこない」

「えっ? ま、マモノって何……?」

「クソ女神から説明があるさ——」


『はいはーいっ! 勇者の皆さん、起きたかなーっ?』


 上のほうから女神の声がする。


「うるせえっ! ここはどこだっ?!」


 笹山が上に向かって怒鳴る。


『あははっ! 元気でいいわ♡ ここは迷宮の最深部ですっ! 皆さんが生き残るためにわぁ、魔物を倒して、出口を目指さないといけませんっ!』


「ふざけんなっ! さっさとここから出せっ!」


『ダメですっ! 勇者の皆さんには、魔王を倒すためにとっても強くなってもらわないといけませんっ! ううっ……心を鬼して、私は試練を与えているのですぅ……』


「何が試練だっ! ぶっ殺すぞっ!」


『今回の勇者は、威勢が良くて好きだわ♡ 装備も食料も少し多めにあげちゃうっ! ではでは、迷宮攻略頑張ってね〜〜っ! ちゅっ♡」


 どさっ!


 上から大きな宝箱が落ちてくる。


「なんだよ……これ?」


 笹山が宝箱を開けようとするが、


「待って……っ! 何かの罠かも? ほら、ゲームでよくあるんじゃん。宝箱が魔物だったとかさ……」


 桜庭は、蓋に手をかけた笹山を止める。


「それもそうだな……あっ! いいこと思いついたっ! 湊川く〜〜んっ! 【任務】の時間だよ。この宝箱を開けろっ!」

「きゃははっ! 笹山、超頭いいじゃん! 湊川ならゴミスキルしか持ってないし、宝箱に食べられてもOKだよねーっ!」


 (こんな状況になってもイジメかよ……)


 まあ……この宝箱は安全だ。


 桜庭が言ったような、トラップはない。


 中身は、装備と食料が入っている。


「ほらほら、湊川、さっさと開けろよっ!」

「もたもたしてんじゃないわよっ! グズっ!」

「……わかったよ」


 念のため、こっそり鑑定スキルを使ってみたが、


 今回も宝箱には、トラップはない。


 用心に越したことはない。


 クソ女神は、何をするかわからないからな。


「優斗……本当に大丈夫?」


 亜美が心配している。


「大丈夫だよ。あの宝箱は安全だ。開けてくるよ」


 俺は宝箱の前に行って、ゆっくりと蓋を開ける。

 

「おい。中身は何だよ?」

「剣とか盾とかの装備。あと、パンと水が入ってる」

「マジかよっ! 邪魔だ! さっさとどけっ!」


 どんっ!


 笹川は俺を押しのける。


「みんな、見ろよ……っ! 装備と食料だっ!」



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