第2話 二度目の異世界召喚、いじめっ子のヤンキーが…「はーいっ! 反抗的な子は死んじゃえっ!」

「……ここはどこだ?」

「いったい何が起こったの?」

「クソ! 何だよ。ここは……っ!」


 真っ白な何もない部屋で——


 倒れていたクラスメイトが、起き上がる。


「はーいっ! 勇者の皆さん起きてくださいねー! これからスキルをあげますよ〜〜っ!」


 やけに明るくて軽快な声。


 白いドレスを来た、見たこともない美女が俺たちの目の前に。


「勇者? 勇者って誰だよ?」

「スキルって何?」

「ここはどこだっ!」


 俺はあいつを知っている。


 また【アレ】に巻き込まれるなんて……


「……私はこのクラスの委員長です。あなたは誰ですか?」 


 委員長の有栖川さんが、美女の前に出る。


「あたしはね、アテナって言いますっ! この世界のぉ、女神様でーすっ! あはっ★」


 (相変わらず、クソふざけた奴だ……)


「め、女神様……? それって冗談ですよね?」


 有栖川さんは首を傾げる。


 まあ、当然の反応だ。


「ふっふっふ……それが本当なんですよーっ!」

「でも、そんなの、信じられないです……」

「はいはい。そうだよね! よく聞いておいてね。皆さんわぁ、異世界に召喚されましたっ! パンパンカパーンっ!」

「…………」


 有栖川さんは、呆然としている。


 そりゃそうだ。


 簡単に信じられることじゃない。


 【前回】も同じだった……


「しょ、召喚って……? いったい何のために?」

「よくぞ聞いてくれましたーっ! 今から大事なこと説明するから、よぉーく耳をかっぽじって聞くように★」


 やたらよく笑う女神が言うには——


 俺たちのクラスは、アルトリアと言う異世界に召喚された。


 魔王を倒す勇者に、選ばられたらしい。


「魔王を倒せってなんて言われても……」

「だ・か・ら、【スキル】をみんなにあげちゃうのよ!」

「そんなの、いきなり無理ですっ! あたしたちを元の世界に帰してくださいっ!」


 有栖川さんは、毅然と言った。


 ニコニコ笑っていた女神の顔が、みるみる変わっていき——


「……はあ? 人族のくせにウゼェわ。黙って従えよ」


 ドスの効いた、低い声だ。


 さっき雰囲気が全然違う……


 しかし、委員長は引き下がらなかった。


「わ、私たちを、帰し——」


 (ヤバい……っ! このままじゃ……)


 俺はとっさに前に出て、


 有栖川さんの口を、塞いだ。


「モゴモゴ……っ! み、湊川くん……?」  

「有栖川さん、これ以上はダメだ」


 俺は有栖川さんの耳元で囁く。


「どうして……?」

「殺されるから」

「……っ!」


 有栖川さんは目を見開く。

 

「ここは大人しく引き下がってほしい」

「……わかった」

「ありがとう……」


 有栖川さんが黙ったから、


 女神は、元の優しげな顔に戻って。


「うんうん。いい子ねっ! わかればよろしいっ!」


 (ふう。なんとか助かった……)


 と、俺が安心したその時。


「納得行かねえっ! なんで俺らが、マオウと戦わなきゃ行けねえんだよっ! さっと元の世界に返せよっ!」


 ヤンキーの若林が、女神に絡んでしまう。


 笹山と一緒に、俺をいじめてた奴だ。


 人間サンドバック——俺の腹を何度も殴って。


 ……若林は、女神にどんどん近づいていく。


 (や、やめろっ! マジで死ぬぞ……っ!)


「…………はあ?」

「【はあ?】じゃねえよっ! さっと返——」

「反抗的な子は死んじゃえっ!」


 一瞬の出来事だった。


 青い光が、若林の頭を貫いて。


 びしゃあああああああああぁぁぁ……


 鮮血。


 人間の、赤い血だ。


 若林は、膝から崩れ落ちた……


「きゃあああああああああああああっ!」


 有栖川さんが叫んだ。




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