第187話 プライベート・トレーニング

 『騎士の試し』大会出場にあたって、重要な点は三つ。


 まずは当然ながら出場権を得るために、ランクマッチで『六つ星』に到達し、それを大会エントリー終了まで維持すること。


 エントリー期間は一週間あり、『六つ星』以上のプレイヤーが参加エントリー可能となっている。

 エントリー期間終了までに『五つ星』に降格してしまうと、参加エントリーは取り消しになってしまうので、改めてもう一度昇格する必要がある。


 ならば『六つ星』になったらエントリーだけして、ランクマッチには参加しなければいいのではないか。誰もが考える一種の攻略だろう。

 だが、その引きこもりムーブにもカウンターが用意されている。


 エントリー期間中には特別マッチングが規定されており、『六つ星-』のプレイヤーにはランクマッチをプレイしていなくても『五つ星+』からの挑戦状が届く。

 この挑戦状はエントリー期間終了後も有効で、エントリー終了から一日以内に挑戦状を全て対応しなければ、自動的に降格処理となるそうだ。


 通常の『六つ星』プレイヤーも期間中にランクマッチの参加加減によって、『六つ星-』とまではいかないが挑戦状が届くらしい。

 きちんと対戦しましょうね、ということだ。


 ランクマッチに参加する日が少なければ少ないほど挑戦状が送りつけられるようなので、素直にランクマッチでランキングを上げる努力した方が無難だろう。


 それから大会を勝ち上がるためのデッキを構築すること。


 懸念点としては、大会方式が未だに発表されないところ。公平を期すのであれば当日に発表されるのであろうが、大会の進行方式に合わせていくつかデッキのパターンを組んでおいた方がいい。


 まさか千人以上の大会でトーナメントをするとは思わないが、スプリンガーのようなスイスドロー式もどうだろうか。


 格ゲーのようにワンラウンドが五分掛からないのなら対戦の場を用意してもいいが、ノル箱は演出の関係もあり、試合時間にはかなりの幅が出る。本戦へと進むプレイヤーを効率よく削る形の対戦方式が用意される可能性を頭に入れる。


 その上で五十枚以上、百枚以下のデッキを構築し、予備の入れ替え用サブカードデッキを考えなければならない。


 最後に、プレイヤーの強化だ。


 佐藤や鈴木みたいな初心者プレイヤーでも早々に職技能ジョブスキルを習得している状況。大会が始まる頃にはほとんどのプレイヤーが職技能ジョブスキルを覚えているであろうことは想像に難くない。


 常に盤上で揺蕩う弱点たるプレイヤーカードを相手だけ強化している、なんて場面は御免被りたい。

 職技能ジョブスキルについては別に大会だけではなく、通常のランクマッチでも影響を与えそうなので僕も早めに習得しておかねばならない。


 優先順位としては最も高いのが職技能ジョブスキルの習得だと言える。





 話は変わるが、ノル箱で人気の機能について。


 メインは当然ながらカードゲームなのだが、実は動物系にアレルギーを持っている人にもそこはかとなく人気がある。

 なぜかと言えば、それは間違いなくプライベートルームにおけるカード実体化の機能にある。


 基本的にカードの実体化は対戦時やダンジョン攻略時に、出陣させることで発生する事象だ。しかし、プライベートルームでは持っているカードを無条件で実体化させて、コミュニケーションを取ることができるのだ。


 僕も結構うさぎをモフったりするのに重宝している。そっちの意味ではうさぎも人気カードだ。死ぬほど市場に余ってるから価値は上がんないけど。


 プライベートルームの出入り口は町中の宿だったり、カード協会の有料会議室だったりするが、内装は好きな環境に変更可能となっている。また合意があれば、他者のプライベートルームに入れさせてもらうこともできる。


 つまり、秘密の特訓にはもってこいの場所というわけだ。


「だからと言って、フラワリィさんを巻き込んでいいという法律はございませんよぉっ! 何の恨みがあってフラワリィさんをこんな地獄に呼んだのですかあ!?」


 僕の周囲を飛び回りながら【フラワリィ】がギャンギャンと文句を言う。


「こんな特訓、一人で受けていられるか! 相棒なら苦難も分かち合おうぜ!?」

「そ、そんな都合のよ」

「あっ!」


 突然閃いた光線が【フラワリィ】に直撃し、ジュッ、と焼けてトンボのようにぽとりと落ちた。動揺して動きを止めたから……。


「はいはい、見極め大事よ~」


 のんびりとした様子で手元から何かを放るのは、我が神秘の師匠アインシャント・アインエリアルである。

 相変わらず着てるんだか着てないんだか不明な服装で、どこから取り出したのか何か投げてくる。


 大分手前に着地したそれは、地面で芽吹き、蔓が急激に成長して僕の方へと伸びてくる。


「うおおおおおおお!?」


 得体のしれない植物が僕の四肢を捕えて、遥かな上空へと運ばれる。


「捕まってしまったら当てるしかありませんわね」


 アインエリアルの横で剣を構えたシャルノワール・アズール・スタブライトがそんなことをうそぶいた。


「ま、まだ脱出が……!」


 妙にウネウネしている蔓を千切ろうとして引っ張るが、僕の握力ではビクともしない。ウナギみたいにニュルニュルしやがって……!


「頑張って耐えてくださいな」

「く……っ、クソオォォォッ!」


 シャルノワールが軽く突き出した剣先から光線が飛び出して、捕まえている蔓もろとも僕をコンガリと焼いていった。


 ぼ、防御できねー……。

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