第107話 『星灯舞踏会』の主催
三十五階層。そして四十階層。
僕らは猛る熱情のままに駆けていく。
もはや3000程度の敵を並べたところで、僕とリッカの前に立ち塞がる壁とはなれもしない。
リソース削りへと
つまり、僕らは資格を得たのだ。
『
序盤から中盤までは篩い落とし。単純な戦闘の能力による選別。
そこを抜けた者たちは
しかしながらすでに僕とリッカは
触れる敵全てを薙ぎ倒し、一部をイクハ、あるいはフルナに摘まんでもらって被害を分散しながら進んだ。
それでも合計で六十五枚、素直に割れば一人あたり十六枚のカードを失った計算だ。多少の偏りはあれど、終盤は手番を割り込ませる余裕もあまりなく、結果的には平均枚数を削られた。
僕とリッカの二人だけで受け持つよりも相当枚数を温存できたから十分ありがたい。
――四十五階層。
この塔の規則通りなら、ランクアップした敵が単体で出てくる。
おおよそは塔の階層に沿った戦闘力になる、であれば戦闘力4500前後の敵が配置されるはず。行動力もさらなる強化が入るだろう。
【
勘違いしそうになるが、【
戦力的には【フラワリィ】を出しておいて良かった。最初に手札から追放されそうなカードだからな……。
嫌そうな顔をしながらも【
20500で倒せない敵が出てくるとは……考えたくない。
考えたくはないが、考えざるを得ない。
数値的に上回られることはない、と予想している。さすがに3000から20000はジャンプアップしすぎだ。敗けイベントに等しい。
それよりもここまで二連続で特殊能力に舵を切った相手が出てきているのだから、より洗練された特殊能力の使い手が現れ、完封される可能性がある。
とはいえ、あれこれ予想をしても実際には戦ってみるまで分からない。
心構えだけしておいて、僕らは進むしかないのだ。
「行くか」
四十五階層の扉を押し開ける。
その向こう、立っている
「よくぞここまで登ってきたな、歓迎しよう挑戦者よ」
豪奢な騎士鎧を身に着けた人間。渋い男性の声でそう言った。
「敵性生物じゃない……?」
「舞台の名を知らぬのか? ここは『
リッカの呟きを耳聡く拾う騎士が答える。
舞踏会なんてモン、人間くらいしか開かんだろうな。この世界では神々も開いたりするのかもしれんが。
騎士は腰に佩いた剣を抜き、左右に払う。
「ここからは我ら
「……躍る相手は女性が良かったな」
「ジジイですまないな……と言ってもよいが」
どういう了見だ……?
戦う様子が皆目見えない。
ジジイは背を見せ、僕らを階段へと誘った。
「我らが主の目に適った。主はもう待ち切れないと言うのでな……直接、その実力を披露したまえ、挑戦者たちよ」
「お誘いいただけるとは光栄だ。僕のダンスパートナーはもちろん女性なんだろうな?」
「残念ながら我が主は男ゆえな」
冗談の通じないジジイに僕が肩を竦めて三人を振り返ると、酷く冷たい目で見られていてギョッとした。
「三人もいて足りないっていうの……?」
「えっ、いや……そういう意味では……三人もいてって何?」
「おぬし、言葉の使い方には気を付けぬと、その内刺されるぞ。では参ろうか」
ジジイの助けに乗り、僕は颯爽と上階へと向かった。
少し怖くて後ろを振り返れない。
代わりに階段の側面に付いている窓の向こうへと意識を放つ。
地表、人気のない荒れた風景から始まったこの巨塔攻略も、今は大地から遠く離れ、遥か彼方に世界を二分する藍と蒼の境界線が見える。
僕は一日の間を空けて、再び夜空へと帰ってきた。
大会ではゆりかご……深く柔く包まれるように丸い場であった。
「ここが五十階層――塔の最上階、『
星の灯りが全て集ったかの如くまばゆい。
ネオン輝く夜の繁華街を訪れたのかと思うほど、色とりどりの星光が眩しい舞台。
塔の頂上は剥き出しとなっていて、壁・天井がなかった。見下ろせる世界は夜色に染まり、活動を停止している。
星たちが注目しているここだけが、この時間、世界で唯一の活動地点。
世界には僕ら四人しか存在していないのではないかと、そう思ってしまうような明暗の寒暖差が塔と外を隔てていた。
――いや、ここには僕ら以外にも人がいる。
最も星灯りが集まっている場所。奥の玉座に浅く腰掛けている者。
傍に侍る騎士が一人。そして玉座を挟み、対称となる位置に移動する自称ジジイ。
「いやはや、なかなかどうしてやるではないか。神秘の妙も解さぬ輩ばかり蔓延る蛮族共が、まさかこの塔を登頂するとは思わなんだ。褒めて遣わす」
「それはどうも。最後の五階分はご厚意によるものだと思いますがね。無知蒙昧な蛮族ゆえに教えていただきたいが、塔の主とやらが?」
玉座に座る、紅い正装に身を包んだ男が鷹揚に頷く。
「うむ。我が『
Oh……、王族……。
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