第60話 クライマックスは4ターン目
確認で問いかけたが、リョーマは鼻で笑っただけ。
言質を取らせない努力は買うけれども、その態度が答えだ。
『
敗北条件に設定されたプシュケーの喪失、これはフィールド上のプレイヤーがダメージを受けなければ条件を満たすことはない。ならばプレイヤーが直接
代わりに徹底してサーヴァントを駆使して戦う
スターターデッキが『
対面しているリョーマ・ザ・ゴッズの場合は『
その特性は数による圧殺。
例えばアッシュが好む『プレイヤービルダー』はプレイヤーを含む一枚か二枚のカードを徹底的に強化する、質を求める戦略だ。
育てば凶悪だが、育つまでに時間がかかり、万が一外付けの強化を剥がされると一気にやれることが少なくなる。
『
ハイレアの強力なカードも四方を囲まれると秒で溶けかねない。行動力を失ってしまえば
かと言って、高性能カードが混じっていないという願望は不幸の素。
プレイヤーの育つべきメインルートだけあり、『
「『
敵の接近を防ぐためには最後列に陣取るべきではないか。
その疑問にはまだ答えが出ていない。
しかし現在のところ、ウルズフェイズにおいては中央に陣取るのが定石となりつつある。
両端にサーヴァントを並べておけば仮に3ターン目で同名カードを引いてきた時に
別に効率などを無視するなら同じ結果は幾通りものやり方で弾き出せる。
そこをあえて
いちいち場面ごとに考えて導き出すのではなくて、この場面ではこうする、あのカードがあるならこのカードを使う、といったいくつかの
疲労していると著しく思考能力が落ちる。『
『
王道の戦術は今よりも一時間後、今日よりも明日、日進月歩もかくやという速度で進化しているのだ。
要するにリョーマが属する『
イクハがリョーマに敗けた理由もこれで分かった。
彼女もどちらかと言えば『
「おい! いつまで考察してんだッ!」
「あ、僕か。サラ金がターンエンド宣言をしてくれれば気付くんだがな」
「カウント切れで死ねっ」
無言でターンエンドしていたリョーマが中指を立てるパフォーマンス。
残りは二分もないが、行動をしている間はカウントが止まるから焦らなくて大丈夫。考えることはすでに考えている。
「僕のターン……ドロー!」
手札にカードを一枚追加し、即座に【シルキー】から差し引き一枚のプラス供給を受ける。こういったドロー系の特殊効果で隣接マスのみとかの制限がないのは大変助かる。
この手番で僕のやることはシンプルだ。
右側後列にサーヴァントを出陣させる。
「
「ンなのはどーでもいいが……
「酷いことを言うね。このカードがお前を破滅させるのに」
「ハッ! ただの
リョーマには応えず、ここで僕は右側前列、【ハイコボルト・グラップラー】が鼻息荒く待ち構える最前線へと軽い気持ちで移動する。
「ここでターンエンド」
――
手札
リョーマも恙無く処理を終えて、時空の歪みが収まっていく。
「わざわざ殴られに来てくれんのかよ! 痛覚は軽減してあるか!? おれに泣き落としは利かねえから、無理だと思ったら降参してくれよなァ……!」
「うん、まあ仕方がないからね。それから忠告だ」
イキイキと山札に手を伸ばすリョーマに言うと、彼はわずかに胡乱げな顔で僕を睨んだ。
でも言っておかないと後でうるさそうだからな。
「このターンで何とかしないと――お前の敗けだ」
「……ッ、クソザコ愛玩動物どもがイキんじゃねェッ!!! 【ハイコボルト・グラップラー】、痛い目を見せてやれ!」
リョーマの指示に従い、大型犬のようなモンスター
「うっ……、ふ……僕は痛覚0%じゃないんだけど、あまり痛くないね。プレイヤーがしょっぱいと威力も落ちるのかな?」
僕の強がりを真に受けたリョーマが額に青筋を浮かべる。
「すぐにナメたこと言えなくさせてやっから。あえて囲まずにプシュケーが0になるまで殴ってやるよ……痛覚カットしなかった自分を恨めやァッ!」
続いて、敵陣の中央前列に先ほど新たに出陣した
青と赤の境界線を乗り越えて、自陣前列にやってきた【ホブゴブリン・ソードマン】が手に持ったなまくら剣で僕に斬りつける。デッキホルダーの大鎌でガードしたのにプシュケーダメージを受ける。つらい。
空いた敵陣中央前列には
どいつも戦闘力はそこそこ立派だ。【ラビッツオーケストラ】を三枚出せれば僕が戦闘力四倍拳で倒せる程度に強い。
だが、それだけ。
「……僕のターンを始めていいんだな?」
人知れず【
他にリョーマのできることは
「いちいち確認してくんじゃねェよ、ダリぃやつだな……
「やっぱりか……分かった。では、僕のターンを始めよう。ドローッ!」
山札からカードを手札に引き入れると、僕の指は【買い物上手の
「お待ちかねだ! お前を破滅に誘う一手、ここで打とう! 【
トレンチコートを着た人形サイズの使い魔が、板みたいな端末を取り出して動き出す。
「
テキストを説明しているとリョーマがイライラと舌打ちしながら怒鳴った。
「チッ、いちいち口に出しやがって……。妖精みたいなクソカードが一枚増えたところで何も変わんねェから早くしろや!」
「ここからが盛り上がるところなんだ、やらせろよ。それとも黙々と作業みたいにやっている方が楽しいか?」
「……ケッ! 言い争う方が無駄だ!」
作業ゲーも僕は別に嫌いじゃないが、相手と交流があるゲームで作業になるのはクソつまらない。作業にしてこようとするなら全力で抗ってやるのが僕流だ。
改めて。
僕は一度咳をして、早くも迎えたクライマックスチャプターの
「デッキから呼び出すのは【トラブルハンター・フラワリィ】――移動して中央中列に出陣させるッ!」
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