第59話 楽しいデッキ考察バトル
「あまり強い言葉を使うのは止めておいた方がいいぞ」
「ンだとォッ!?」
「結果が出た時に、全ての言動が自分に返ってくるからな」
冷静に返すとリョーマは歯ぎしりをした。
「どういう意味だ、そりゃァーよぉ!」
「お前が披露した理論には諸説あるというだけさ」
「最弱の『妖精』と
「あいつらが一般人だっていうような国には住みたくないな。変人しかいなかったから」
それよりも、と僕は顎でしゃくった。
「遅延行為をしていないで、さっさとターンを進めてくれないか。ヴェルザンディフェイズを迎えるのが怖いなら、手番の制限時間カウントがゼロになるまで話しているか?」
「口だけはよく回るヤローだぜ……! オメーにも返ってくンだからなァ!」
揚げ足を取りながら山札に手を突っ込むリョーマ。
引いてきたカードを見て、ヒュウと軽やかに口笛を吹く。
「わるくねぇな」
そう呟いて【ハイコボルト・グラップラー】とは逆の敵陣左側にサーヴァント出陣の動作。
銅色ではなく銀色の
獣人系など、本来の形質に人の要素が混じった種族は、純粋な基礎能力値としては元の種族に劣りがちだ。
しかし野性には存在しない武器防具の使用、受け継がれる
つまり、リョーマはきっちり油断のならないカードを用意してきた。
「ふむ、
サーヴァント
「どうした、言葉が出ねェみてぇだが」
「……ああ……、ちょっとビビってしまった」
「こんなのは序の口だろーが……この程度でビビってんなら話にならねぇ!」
良い気持ちになっているところ悪いのだが、そういう意味でビビったのではない。
【
だが一度発動すると二度と元に戻らず、敵味方を問わず隣接したカードに殴りかかるようになる。さらに向いている方向に行動力が残っている限り進む。
身体の限界を超える暴走は自らをも蝕み、行動した手番を終えると
だからこそ、そんな使い勝手の悪い、かつお手軽に状況を混沌に陥れるカードを、こんな序盤のどうでもいい場面で曝け出すリョーマにビビった。
絶対に今の場面で出すカードじゃない。僕なら手札に忍ばせておいて、盤面を荒らしたい場面で使うだろう。
「……逆に考えれば【シルバーウルフ】を無駄遣いしても問題のないほど潤沢なデッキなのか」
リョーマは『極東騎士団』にスポンサードを受けているという。
『極東騎士団』は僕も知っているプレイヤーギルドの大御所だ。トップが『七つ星』の一人、そして『来る者拒まず』の方針で拡大に拡大を重ねている。もっとも、『七つ星』のギルドマスターはほとんど名前貸しに近くなっているらしいので、僕はあまり興味がなかった。
プレイヤーギルドとは、プレイヤーだけが入れる互助会というのが近い。後々になったらギルド対抗戦とかも始まるかもしれないが、現時点ではゲーム的特典は何も無く、プレイヤー同士の交流を図る場所となっているようだ。
いくつも発足している中でも『極東騎士団』は最前線を走るギルドだけあって、プレイ指導やらカードの貸出なども手厚いと聞く。
デッキの半分を
「おいおい、遅延行為かよ? ささっとドローしてくれよなァ」
ターンエンドの宣言がないので考え込んでいると、リョーマが煽りなのかそんなことを言ってきた。
ふむ、手元に呼び出したスクリーンで進行操作ができるとはいえ、黙って進めてそれを煽るのはマナー悪いな。だからといって頭に血が登ったりはしないが。この程度ならかわいいものだ。
「失礼。では、僕のターン。ドロー!」
大鎌で空間を斬り裂き、手札を追加する。もっと楽に手札引けないか?
返す刃で浮いている手札の一枚をタッチする。
「続いて【買い物上手の
選択したカードが【シルキー】の手に渡る。実はよくよく見ると、この時点でカードは紙幣に変化しているのだ。どこで使える紙幣かは知らない。今のところ、王都では硬貨しか見ないのでサーヴァント界のお金なのかも。
バスケットから引っ張り出してきたカードを受け取る。
立派におつかいできてえらいな、と頭を撫でてやる。意外と喜んでくれるあたり、やっぱり子供なのかもしれん。
これで手札は八枚。手札の枚数制限は存在しないので多い分には問題なし。手札破壊のカードをリョーマが所持しているならマズいが……それはない、と推測する。次のターンには確信に到れるだろう。
一旦、戦場を整理する。
自陣は中央後列にプレイヤー:僕、左側後列に【買い物上手の
敵陣は中央中列にプレイヤー:リョーマ・ザ・ゴッズが移動している。
左側中列にいるのは【
想定されるリョーマの次ターン行動は、【ハイコボルト・グラップラー】の
で、あれば。
「僕は右側後列に一マス移動……そして、立っていた中央後列にサーヴァントを出陣させよう。来い、【ラビッツオーケストラ:ヴァイオリニスト】!」
今回のうさぎは女の子だったようだ。青いうさぎが海色のドレスを着用し、ヴァイオリンを構えて
とりあえず今は休めと身振りで示すと、ヴァイオリンは降ろしたがシャッキリ立ち続けている。うさぎのくせに器用だな。
「きみの演奏を聴かせてもらうのはもう少し後だ。出番を待っていろ」
「くくっ、出番が来たところで、なァ?」
そう割り込んできたのは、当然リョーマだ。
僕のサーヴァントたちをねめつけて、大げさに鼻で笑う。
「なんだそいつは、戦闘力の強化能力? 所詮はウサギと妖精だろォーが! 貧弱な戦闘力のザコをいくら強化したトコでザコはザコなんだよッ!」
「まあ、パワーに欠けるシリーズなのは認めよう。僕は右側中列に移動してターンエンドだ。最後のウルズフェイズ、後悔のないように進めてくれよ?」
1マスほど前に出て、片手で「さあどうぞ?」と進行を促す。
「チッ」
僕が煽りに乗らないからか、舌打ちをしてリョーマをドローを行う。
手札を眺めて少しばかり悩んだ彼は指を踊らせた後、中央前列にサーヴァントを出陣、同時に両端のサーヴァントを前列へと移動させた。
推測は確信になった。
「あれやこれやと細かく口を挟んでくる割には基本に忠実なんだな、『
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