第30話 天地/雲壌

 その日もナツメさんはハンバーガーをモリモリ食べ、私がめくるファッション雑誌を夢中で読んだ。

「ねぇナツメさん」

「なんだい?」

「ナツメさんの体を探そう。あるかもしれないなら、見つけよう」

 私は、ここ最近ずっと考えていたことを口に出した。

 ナツメさんの体を探して、ナツメさんがどこへでも自由に行けるようにしたい。

 結局、首だけのナツメさんは橘さんから私に縛られているのと変わらない。

 だから、体を見つけてあげたい、と思った。

「体を見つけたらさ、きっとどこにでも行けるよ」

「……うん。オシャレも出来るね」

 嬉しそうなナツメさんに、私もにっこりと笑った。

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ナツメさんと私の平凡な日々 赤オニ @omoti64

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