第29話 答え
ぽつりぽつりと雨が降り出した。
話し終えた橘さんはどこかスッキリしたような顔をしている。
「彼女にまた会いたいと思いますか?」
話を聞き終え、自然とそんな言葉が口から出た。
橘さんは寂しそうに笑った。
「会いたいとは思うよ。でも、もう僕に縛ってはいけないと思うから」
それが橘さんの出した、答えだった。
カフェの前で橘さんとは別れた。雨が降っているから、と渡された折り畳み傘を差し、私は家へ帰った。ナツメさんの待つ家に。
「ただいま、ナツメさん」
「おかえり。雨だったけど、大丈夫だった?」
布団の上でごろりと転がるナツメさんを腕に抱き、しばしじっとする。ナツメさんは、何も言わなかった。
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