第26話 故郷

 ナツメさんは、故郷に帰りたいと思うことはあるんだろうか。

 私は未だに実家暮らしで地元から出たことがないから、故郷を懐かしむ気持ちは分からない。

 ナツメさんに聞いてみようか。

「ねぇナツメさん。ナツメさんの故郷ってどんなところだったの?」

 私の質問に、ナツメさんは布団の上でごろりと転がりこちらを見る。

「穏やかなところだったよ。昔だからどこも似たような田んぼと畑に囲まれた土地だったけど、自然が多くてね」

「へぇ……。故郷を懐かしむ気持ちとかあったりする?」

「昔過ぎてそれはもうないかな。きっと故郷ももう影も形も残っていないだろうし」

 そう言ってナツメさんは笑った。

 田んぼと畑に囲まれた土地かぁ。そこでナツメさんは育ったんだ、と私は少しだけナツメさんの故郷を想像した。

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