第22話 呪文

「痛っ」

 指先に走った赤い線に、思わず声を上げた。

 段ボールを開けようとして、指先を切ってしまった。乾燥もあり、皮膚が切れやすい時期だ。

 こういう傷って、地味に痛いんだよねぇ……。

「大丈夫?」

「うん。段ボールで指切っただけ」

「痛いの痛いの飛んでけ~、なんて。ふふ」

 ナツメさんの言葉に、「子供じゃないんだから」と苦笑いを返す。

 いや、子供みたいなものか。だって、私が寂しい、という理由だけで、ナツメさんをこの家に縛り付けている。

 ナツメさんは生首だから、誰かに運ばれないと移動できない。それを良いことに、私は橘さんのことをナツメさんに伝えないでいる。

 ――卑怯かな、やっぱり。

「ねぇナツメさん。幼なじみの彼さんって、どんな人だったの?」

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